アジアが認めた緑の景観支えた立役者 黄色い車体にファンも生まれた「世界初」芝刈り電車、惜しまれつつ引退 鹿児島市
「市電の軌道緑化が草ぼうぼう。芝刈り電車が引退したみたいだけど…」。アスファルトに覆われた市街地で、ひときわ涼やかな景観を演出している芝生軌道に異変が起きているとの声が、南日本新聞に寄せられた。管理する鹿児島市公園緑化課は「芝刈り電車が老朽化したため交通局への業務委託は終了したが、民間業者による維持管理は、例年通りに実施している」と説明しており、近くきれいに刈られる見込みだ。 【写真】芝刈り電車にきれいに刈り込まれた緑化軌道
同課や交通局によると、アジア都市景観賞など多くの受賞歴がある芝生の市電軌道緑化は全長8.9キロ。鹿児島駅前(電停、以下同)~中洲通、高見馬場~郡元の区間の管理は2023年度まで、芝刈り電車、散水電車を保有する市交通局が約1000万円で受託し、夏場を中心に年4、5回刈っていた。芝が伸びすぎてレールを覆うような場合は、「車輪の空転やブレーキが利きにくくなる原因になる」(電車事業課)という。 芝刈り電車では刈れない中央分離帯や残りの区間は、他に約4000万円ほどの予算で民間に委託していた。芝刈り電車の老朽化に伴い、24年度からは全区間を民間が担当。読者から「草ぼうぼう」との声が寄せられた郡元~工学部前も、以前から民間が管理しており、「芝刈り電車を使わなくなった影響はない」(公園緑化課)という。 交通局によると、黄色い車体が目を引く芝刈り電車は10年、交通局と大阪の業者が開発し、“世界初”の触れ込みで導入された。廃電車の台車に芝刈り装置や吸引・回収装置、照明などを装備。水槽を積んだ散水電車にけん引され、夜の市街地をゆっくりと巡る姿を見学するファンもいた。
芝刈り、散水の両電車はいずれも廃車となるが、芝刈り電車は当分の間、車庫に保管される。電車事業課の末吉健治課長(55)は「新聞などマスコミに取り上げられて親しまれた。長く活躍してくれてお疲れさまと言いたい」と話した。
南日本新聞 | 鹿児島