桑田佳祐「日本語ならではのエモーション、情念みたいなものが出やすい」作詞を語る
TOKYO FMをはじめJFN全国38局が毎年“文化の日”に送る全国ネット特別番組『FM FESTIVAL』。2023年度は、11月3日(金・祝)に『FM FESTIVAL 2023 サザンオールスターズ デビュー45周年!「サザンとわたし」スペシャル』が放送されました。 デビュー45周年を迎えたサザンオールスターズをお祝いし、全国のリスナーから「サザンオールスターズと自分の人生が大きく交差した忘れられない思い出エピソード」とリクエストを、「サザンとわたし」というテーマで募集。サザンの名曲の数々とともに紹介していきました。 番組では、進行の住吉美紀が桑田佳祐さんにロングインタビューを実施。ここでは、自身の作詞・作曲方法を明かし、その裏側に隠された思いを語ってくれました。
◆桑田佳祐が“音楽屋”と自称する理由
ーー番組では、リスナーからの「天から降りてきた曲と、絞り出した曲では、どちらが多いですか?」という質問に答える場面もありました。 桑田:こう見えても七転八倒しているんですよね。天から降りてこないですよ。 住吉:曲作りのなかで決まりごとはありますか? 桑田:まず、スケジュールが決まっていることが大事かも。“曲を作らなきゃ”っていう縛りですね。ただ、机に向かって作れるものでもないので、移動中とかに車のなかで(メロディーが浮かんでくることもあります)。 住吉:車内に録音するものがあるんですか? 桑田:ICレコーダーに入れるんだけど、車のなかで吹き込むとノイズばかりで全然ダメなの(笑)。悠々と口ずさんで録音したのに、何も聴こえないという(笑)。 住吉:メロディーがふっと浮かぶのでしょうか? 桑田:極端な話になって申し訳ないんだけど、新しい曲なんてないと思うんですよね。だいたいがデジャヴというか。降りてくるとしたら、たぶんそれは過去に誰かが作ったものの断片なんじゃないかなと思います。 歌詞もそうだけど、世の中に、(自分が)最初に作ったメロディーなんてないんじゃないのっていうか。“ありものの組み合わせの妙が面白い”っていうのが、ポップスなのかなって気がします。 住吉:たくさんの断片を組み合わせて、素敵だと思える曲を作れていることがすごいと思います。 桑田:メロディーだけが浮かぶことはなくて、そこにプラスして弦が鳴っている(ようなイメージだったり)。譜面をササッと書けたらいいなって思うことはありますよ。書けないからICレコーダーに吹き込むんだけど、失敗することがよくあります。 住吉:譜面で書かないからこそ、染みこむポップスが生まれてくるのかもと思いました。 桑田:だから、僕は音楽家ではなくて、音楽屋だと思うんですよね。僕の場合、例えばベートーヴェンやモーツァルトのように、「自分が思ったことを紙に書いたから、この通りに演奏してね」っていうことができないんですよ。 吹き込んだ断片をスタジオに持っていくところから始まる。コード進行ぐらいはあるけど、「テンションは原坊(原由子)に考えてもらおうかな」と考える。そのように、いろいろなトライ&エラーを繰り返すしかないんです。