制度75周年の節目に殺人事件の「衝撃」… 岐路に立つ保護司制度、大変革へ「歩み止めるな」
犯罪者に占める再犯者の数が高止まりしていることも念頭に、法務・検察当局は、犯罪者の更生保護の充実に努めてきた。執行猶予判決を受けた犯罪者に対する支援も、その一つだ。
刑務所などの出所者支援を「出口支援」と呼ぶのに対し、刑務所などで服役することなく、罰金刑や執行猶予判決を受けて釈放され刑事手続を終えた者を福祉サービスなどにつなぐ支援は「入口支援」と称される。
最高検は平成28年以降、各地検に入口支援担当職員を配置するよう後押し。地検と都道府県の保護観察所など更生保護機関との連携や地域定着センターといった福祉機関との連携、雇用を推進してきた。
しかし、そうした取り組みが進んでも、「大津の悲劇」を防ぐことはできなかった。
■「一丁目一番地」
今回の保護司殺害事件が起きたのは、法務省の有識者検討会が、保護司制度見直しの議論を進めていた真っ最中のことだった。事件直前の3月に公表した中間報告で「保護司活動は危険ではないという現実をアピールしていく必要がある」としていたが、認識の甘さが露呈した形だ。
法務省関係者は「元々、更生保護の現場には『危険が伴うのでは』との懸念がくすぶってきた。それだけに事件の衝撃は絶大だった」と振り返る。
検討会の主題は当初、高齢化が進む保護司の担い手確保だったが、事件を受け急遽(きゅうきょ)、安全確保策を盛り込むなど軌道修正を余儀なくされた。
最高検や東京地検での勤務歴が長い法曹関係者は、石破茂内閣のもとで法相として初入閣した牧原氏が弁護士であることも念頭に「経年劣化した制度の立て直しが法務・検察にとって急務の『一丁目一番地』と理解しているはずだ」と推察。
別の法務・検察当局OBも「重要なのは、更生保護のあるべき姿を追求する歩みを止めないこと。止めれば制度の見直しに向けた努力は全て水泡に帰する」と警鐘を鳴らす。
善意やボランティア精神に甘えてきた保護司制度は今、大変革を求められている。