日本を代表する画家に酒蔵、豆腐飯…食や文化を育む高梁市成羽地区 岡山【いまココ!ナビ】
KSB瀬戸内海放送
岡山・香川の話題のものやスポットを紹介する「いまココ!ナビ」です。今回は高梁市の成羽地区を巡ります。成羽出身の日本を代表する印象派の画家・児島虎次郎の作品や、今まさに仕込みの時期を迎えた日本酒の蔵元、江戸時代から伝わる郷土料理「豆腐飯」を紹介します。「文化・歴史の街」の魅力を感じて下さい。 【写真】建築家・安藤忠雄さんが設計した高梁市成羽美術館
■日本を代表する画家・児島虎次郎の出身地・成羽地区 高梁市の成羽地区。街の中央部に高梁川の支流・成羽川が流れ、自然や芸術、そして文化に彩られた街です。 その自然の景観を背に佇むスタイリッシュな建物、高梁市成羽美術館。成羽川をイメージした流水庭と調和したコンクリートの建物は建築家・安藤忠雄さんの設計です。 現在、ここでは成羽地区の出身で日本を代表する印象派の画家・児島虎次郎らの作品を紹介する企画展が開かれています。 (高梁市成羽美術館/吉田遥 学芸員) 「こちらの作品が私はすごく好きですね」 虎次郎が留学先で、和服を来たベルギーの少女を描いた華やかな作品「和服を着たベルギーの少女」(1910年)です。 吉田さん「色使いもすごく好きですね。結構濃い色というか、割と派手な色を使っているんですが、うまくマッチしているなと個人的には感じるんですけど、素敵だなと思っています」 記者「表情がいいですね。着慣れないものを着てる『戸惑った雰囲気』とか、うれしそうな『はにかんだような雰囲気』とか」 吉田さん「ドキドキしながら着ただろうし、少女特有のはにかみみたいなものも感じられるかなと私も思います」 虎次郎は16歳頃、東京で絵を学んでいた郷土の先輩・井上啓次の絵を模写しました。 吉田さん「当時の少年にはなかなかキャンバスとか油絵の具を購入することはできないので、木枠に白い木綿を張ってそこにペンキで着色した作品です」 記者「心打たれるものがありますね」 吉田さん「そうですね。その時自分のできることを画面にぶつけたんではないかなと思いますね」 虎次郎が画家になるのを反対していた家族を親族が説得し、虎次郎は現在の東京芸術大学で学びます。その後、ヨーロッパなどで修業し、当時、流行していた印象派の明るくのびやかな作風を身に付けます。 世界各国の文化に強い興味を抱いた虎次郎。倉敷市の大原美術館の主要なコレクションの多くを収集したことでも知られています 「コーヒーを飲む婦人」は、下絵と一緒に並べて展示しています。 吉田さん「目がどこを見てるんだろうという。背が丸まって、疲れているような、何か見てるような見てないような、考え事をしてるような、色んなことを想像させられるような絵だなと思いますね」 記者「コーヒーが冷めてるんじゃないかなと思って」 吉田さん「ああ確かに確かに。ちょっとコーヒーを飲んで、そのあと、自分の世界に入り込んだような」 この他、虎次郎が愛着を持っていた倉敷市酒津の自宅の風景を描いたものもあり虎次郎の功績やその生涯を辿ることができます。 ■創業130年超…成羽の酒蔵 伝統の技術 次は鍋の季節に恋しくなるアレ・・・。やって来たのは創業130年を超える蔵元「白菊酒造」です。こちらでは蔵の見学を受け入れています。 渡邊秀造社長が案内してくれました。 (白菊酒造/渡邊秀造 社長) 「新酒も少しずつしぼりつつあるんですけれども、これから1月にかけてが、酒屋さんにとっての仕込みのピークになってくると思います。だんだんこれから忙しくなってまいります」 今シーズンの酒造りはまさにこれからが本番! この日は蒸し上がったばかりの新米を、職人が次々と冷却機に移していました。 渡邊さんによると、酒造りの米は炊くのではなく、蒸気で蒸すのだそうです。 米が冷めると仕込みタンクの中に投入し、棒を使って中の酒母と混ぜ合わせます。これを「かい入れ」と言います。 その他、蒸した米に杜氏が麹を振りかける様子なども見せてもらいました。 (白菊酒造/渡邊秀造 社長) 「新酒独特の新鮮な、フレッシュな味や香りを楽しんでいただける時期がまもなくやってまいります」 11月に文化庁は日本の「伝統的酒造り」がユネスコの無形文化遺産に登録される見通しになったと明らかにしました。 世界から注目を集める日本酒、その伝統技術が生み出す味わいを堪能することができます。 ■郷土料理の「豆腐飯」が寺で復活 最後に紹介するのは人の営みが育んだ郷土料理。 成羽美術館からほど近い日蓮宗の寺「本光寺」。本光寺は江戸時代からこの辺りで食べられたと言われる郷土料理の「豆腐飯」を、1年ほど前から提供しています。 ご飯にのっているのは、茹でて炒めるなどした木綿豆腐、ゴボウ、カンピョウ、錦糸卵などの具材。おだしをかけていただきます。 (記者リポート) 「いただきます。いい香りがしてます。豆腐が口の中でほろほろほどけるような感じで、野菜のうま味がじわっと広がって、めちゃくちゃおいしいですね」 このあたりではかつて法事の際などに豆腐飯を食べたそうですが、近年は作る人が減っているそうです。 (本光寺/平野泰淳 住職) 「(子どものころから)好きでよく食べてました。せっかくの郷土料理なんで、お寺で復活して、今出しております」 (住職の長男/善くん) 「(Q.豆腐飯好きなの?)うん! おだしとごはんがおいしい」 文化、芸術、そして食に彩られた高梁市の成羽地区。この秋、ゆっくりと散策してみてはいかがでしょう。
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