欠陥消費税が阻む日本経済再生 石破首相は一過性のバラマキ、付け焼き刃の「デフレ脱却」より…国会で税制度の根本的な見直しを
【お金は知っている】 27日には衆院選の投開票が行われるが、問題は選挙後だ。政権がどうなろうと、経済失政と決別できるかどうか。 【表でみる】夕刊フジが作成した「落選危機にある大物・著名候補21人のリスト」 失政の代表例が消費税である。これまで指摘されてきた消費税の問題点は主に消費サイドに焦点を合わせている。消費者は店頭で消費税分を含め支払うが、実際に消費税額を税務当局に納めるのは事業者、つまり供給サイドである。中小、零細企業を含めた企業側から見れば、日本型の消費税には重大な欠陥が潜んでいる。それをズバリ指摘するのは元財務省キャリア官僚の公認会計士、桜内文城氏である。 桜内氏によれば、日本の消費税制度は課税売上高から仕入れ額を差し引いた残額(粗利)に税率をかける欧州の付加価値税制度とは似て非であり、企業の雇用や設備投資行動を大きく歪(ゆが)める。日本の消費税は正社員の給与、ボーナスなど人件費、さらに設備などの減価償却費を仕入れ控除の対象から除外し、その大半が10%の消費税率の対象になる。逆に、企業の外注費は控除される。ということは、正社員雇用を避け、非正規雇用に切り替えれば、消費税負担を減らすことができる。また減価償却費の増加を防ぐために、企業は新規設備投資に後ろ向きにならざるをえない。 こうして現行消費税制度は長い間、家計消費や設備投資、賃金・雇用を押さえ付けてきた。税率が上がるたびに経済の破壊力を増し続ける。その結果、日本経済はどうなったのか。 家計消費と設備投資を国際比較してみたのが、本グラフである。実質、ドルベース2022年の対1995年比の総固定資本形成(民間設備投資、住宅投資やインフラ投資の合計)は1割減であるのに対し、韓国2倍、ユーロ圏1・6倍、米国2・3倍である。技術革新と経済のダイナミズムの源泉である設備など固定資本の国際競争で日本は取り残されてきたことが明らかだ。家計消費の伸びも年平均でゼロコンマ1%未満の伸びしかない。消費税は日本衰退傾向を定着させる「悪魔の税制」とすら思わせるではないか。 衆院選で、各党は物価高のもとでの家計支援策を競うが、自民、公明両党は家計への給付金やエネルギー代補助をうたう。野党第一党の立憲民主党は中低所得者が負担する消費税の一部に「給付付き税額控除」を唱えるが、これもまた一過性のバラマキの域を出ない。民主党を前身とする立民の野田佳彦代表は民主党政権時代の2012年に首相として消費税大型増税の3党合意を主導し、「増税すれば景気はよくなる」という迷言を吐いた。野田氏は消費税増税の誤りを認めない代わりに、小手先で苦肉の策の給付で切り抜けようとする。
石破茂首相は持論の「反アベノミクス」を封印して「デフレからの脱却」を唱えるが、付け焼き刃の感ありだ。与野党が経済再生に本気で取り組むなら、再開後の国会で消費税制度の根本的な見直しを始めたらどうか。 (産経新聞特別記者・田村秀男)