国際ジャーナリスト・堤未果 民は弱いか、真実が知りたい 情報、食、金…違和感の正体に切り込む新刊「国民の違和感は9割正しい」
【ぴいぷる】 意外にも社会人になるまで「ジャーナリスト志望でなかった」と言う。 「芝居や映画に興味があって」と日本の高校を卒業後、カリフォルニアに留学。「各国から集まる学生と仲良くなる中、世界を知らねば」と思うようになり、ニューヨークで国際関係論を学び、ウォール街の証券会社で働き始める。 理由は「アムネスティで寄付を募る活動をしていたとき、金融のルールが分からなければ戦えないと痛感した」からだが、人生を変える出来事に遭う。 2001年9月11日に起きた米同時多発テロ事件だ。 「私が働くオフィスの目の前のビルに旅客機が突っ込み、次々と人が落下していきました」 大きな衝撃を受け帰国するが、次第に「真実を知りたい」という思いにかられ、「ジャーナリストを目指していた」と振り返る。 父は放送界で名の知れたジャーナリスト、ばばこういち氏。「それまで意識したことがない」と話す職業を選んだのは、やはり父子の血なのか。 こう問うと、笑いながら「幼い頃、両親が離婚。母と暮らしていましたが、父との仲は良好で私がジャーナリストになってからはいろいろと親身になってアドバイスしてくれましたよ」と打ち明ける。 父からの教えとは? 「1年に1冊は本を書け!」とげきを飛ばされたそうで、「書けば書くほど確かになる。読めば読むほど豊かになる…」とも言われたという。 師(父)から弟子(娘)への教えは父亡き後も一子相伝の道標だ。 新刊を読めば、利権が渦巻く社会の闇を突きつけられ、ショックを受ける読者は少なくないかもしれない。 だが、希望はある。 「私が好きだったアメリカには高い精神があった」と言い、こう続ける。 「会社と労働者が共に繁栄できる道を目指したヘンリー・フォードや巨万の富を築いた後、平和のために私財を投じたアンドリュー・カーネギーなど私利私欲より公益を尊ぶ素晴らしい企業人がいたのですから」 日本では、企業倒産やリストラのニュースを連日耳にするが、「民は愚かで弱いという考えは、得をする誰かからの刷り込みにすぎません」としたたかに生き抜く知恵を身につける大切さを熱く訴える。