「忠臣蔵を若い世代にも知って欲しい」大阪で落語×文学×上方舞のコラボ公演、文化の縦分裂にも危機感
伝統芸能の中の音曲=「和のクラシック」にスポットライトを当て、異なるジャンルをコラボレートする『RENBO』。2023年に続き第2弾となる今年は『RENBO Vol.2 忠臣蔵綺譚 ~桂春蝶「中村仲蔵」相勤め申し候~』と題し、「忠臣蔵」を題材にした落語、朗読、日本舞踊を上演。それぞれのBGMを三味線や胡弓といった和楽器で彩っていく。 【写真】会見の様子 出演は落語家の桂春蝶、日本舞踊・山村流師範の山村若静紀、地歌三味線 演奏家の菊央雄司、ABCテレビアナウンサー桂紗綾。そして総合演出を劇作家・演出家で伝統芸能に造詣が深いわかぎゑふが務める。 ■ わかぎ「若い世代にも『忠臣蔵』を知ってほしい」 江戸時代中期に起きた赤穂事件を基にした「忠臣蔵」。47人の赤穂義士が藩主の仇討ちを成し遂げる物語は広く知られていた・・・というのは今は昔、とわかぎ。「うちの劇団員(リリパットアーミーII)に『忠臣蔵』って何か知っているかと聞いたら、『17人ぐらいの侍が城攻めしたんですよね?』と答えるぐらい、今の若い人たちは『忠臣蔵』を知りません。若い世代にも『忠臣蔵』がどんな話だったか、また、そこから広がる世界観がたくさんあることも知ってもらいたい」と意気込む。 また、ひとつの使命も抱いている。「古典芸能の人は現代劇を見ない、現代劇のメンバーは古典を見たことがないという『文化の縦分裂』が長い間、続いてきて、文化の横糸をつないでいかないと後世に何も残らないという危機感を何年も前から持っていました。こういう機会があれば率先して携わっていかなければと思っています」。 ■ 多面的に切り取り奥行きのある世界観に 日本舞踊・山村流師範の山村若静紀による上方舞「廓景色(さとげしき)」から幕を開ける。遊女の心情を描いた一曲で、「大石内蔵助が作詞をしたと伝わる曲です。あまり上演されることのない稀曲をスペシャル版としてご覧いただきたいと思います」と若静紀。「この機会に、また観たいと思ってもらえたらうれしいです」と気を引き締める。 続いて創作朗読「仮名手本忠臣蔵」を担うのは紗綾アナウンサー。「ここでは仲蔵の妻おきしが主人公です。おきしは仲蔵が出世していくうえで欠かせない重要人物だったことを朗読でお伝えできれば」。 そして春蝶が最後のバトンを受け取り、平場から名代へと出世した実在の歌舞伎役者で、作中に「忠臣蔵」を演じる場面が登場する落語「中村仲蔵」を披露。春蝶は上方の歌舞伎役者が活躍の場を江戸に移したという設定に変え、自身の境遇を重ねる。 「僕も2011年から東京に拠点を移しました。当時は落語会に出ても孤独で、1からというよりもマイナスからのスタートでした。それだけに仲蔵の気持ちと重なりやすいように思います。逆境に立ち向かい、悔しい思いを抱えているからこそ『中村仲蔵』には魂が乗ってきます」。また、今回は仕草や動きを強調する歌舞伎の効果音「附打ち」も取り入れ、臨場感たっぷりに魅せる。 これら3つのパフォーマンスで演奏する菊央は、令和5年度芸術選奨新人賞を受賞した実力者だ。「落語や朗読と地歌を重ねることを、とても楽しみにしています。私も父親はサラリーマンなので、中村仲蔵の心境はよくわかるところがあります。心して演奏に関わりたいと思います」。 かつては師走の風物詩として日本人に親しまれていた「忠臣蔵」。その風情を舞台から届ける。日程は12月20日・21日、「ABCホール」(大阪市福島区)にて。チケットは一般席5500円(全席指定)。 取材・文・写真/岩本