ウルズラ・フォンデアライエン氏＝ＡＰ

　【ブリュッセル＝酒井圭吾】欧州連合（ＥＵ）首脳会議は２７日深夜、ＥＵ首相に相当する欧州委員長に、現職のウルズラ・フォンデアライエン氏を指名した。今後、欧州議会が承認すれば、続投が決定する。欧州理事会常任議長（ＥＵ大統領）にはポルトガルのアントニオ・コスタ前首相、外交安全保障上級代表（ＥＵ外相）にはエストニアのカーヤ・カラス首相を選出した。

　ＥＵ首脳会議は、今月実施された欧州議会選の結果を受け、新たな「ＥＵ首脳」を選出した。３人は議会選で過半数を得た中道３大会派にそれぞれ所属しており、３大会派で人事を分け合った。

　フォンデアライエン氏はドイツ人で、２０１９年に欧州委員長に就任した。続投が決定すれば、任期は２９年までとなる。ＥＵ高官によると、欧州議会選で伸長した右派会派のメローニ伊首相やハンガリーのビクトル・オルバン首相は、これらの人事に棄権や反対票を投じた。欧州議会で欧州委員長の人事案が無風で承認されるかどうかは不透明な面もある。

　欧州委員長以外の人事は議会承認が不要で、就任が決まった。コスタ氏は１２月１日に就任する。カラス氏は、対ロシア強硬派として知られている。

　首脳会議では、ＥＵの今後５年間の政策方針を定めた「戦略行動計画」も採択した。欧州の防衛産業強化などが柱となっている。フォンデアライエン氏は今後１０年間に必要な防衛産業への投資額として、約５０００億ユーロ（約８６兆円）との見通しを示したという。