センバツ2019 創部7年の歩み/中 大嶋誠さん 審判40年、練習手伝い /福井
<第91回選抜高校野球> ◇グラウンド作り、協力 坂井市丸岡町舛田の大嶋誠さん(71)は2012年春、市内の公営野球場で偶然、ノックを受ける啓新の野球部員たちを見かけた。高校野球の審判を40年近く務め、啓新がその年、大八木治監督を招いて野球部を創部したことはニュースで知っていた。「どんな野球をやるのか」と興味が湧いた。「近くで見てもいいですか?」と大八木監督に声をかけグラウンドに入った。 高校のグラウンドは狭く、十分な練習環境が整わないままスタートした野球部。部員数も16人と少なく、紅白戦もできず球拾いすらままならない状態だった。練習を眺めていた大嶋さんはたまらず球拾いに加勢した。当時、長年勤めた職場を定年退職したばかりで、この出合いをきっかけに啓新の練習を手伝うようになった。 「自前のグラウンドをつくりたい」。大嶋さんは同年の冬ごろ、啓新の荻原昭人校長(52)から相談を受けた。聞けば大嶋さんの自宅からほど近い空き地が候補地という。大嶋さんは地区を案内し、地権者との交渉でも前面に立った。 創部から2年後の14年3月、ようやく専用グラウンドが完成した。両翼95メートル。外野には大八木監督と部員が植えた天然芝が広がり、内野には甲子園と同じ黒土が敷き詰められた。完成祝いの練習試合では、大嶋さんが球審を務めた。 大嶋さんの自宅には毎年春から秋にかけてのシーズン、午後4時半ごろになるとグラウンドから選手たちの掛け声が聞こえてくる。「声が聞こえると、じっとしていられなくなって練習を見に行っちゃうんだよね」。既に公式戦の審判は引退したが、啓新の練習試合の審判は時に手伝い、グラウンド周辺の草刈りもする。「選手たちはとにかくかわいくて、我が子のよう。甲子園では声を出して元気にプレーしてほしい」。7年目の春を心待ちにしている。【塚本恒】