【Bリーグ】篠山竜青が川崎の未来に馳せる思い「どういう選手たちと文化を築いていくのか。その姿勢が大事」【バスケ】
「再建だからといって選手を簡単に切るようなクラブではあってほしくない」
だが、冒頭でも述べたように川崎はCS出場を逃し、横浜BCとの第2戦が今季最後の試合になることが決まっていた。 「他会場の結果もあって、明日で最後の試合になりますが、最後まで川崎らしく戦って、会場に来てくれる方々や応援してくれる人たちに一つの商品価値として良いゲームを届けなければいけないと思います。またしっかり修正して、明日も勝って終われるようにと思います」と篠山。 ひとしきりの回答の中でも筆者に中で刺さった一言は、「自分たちで招いた結果」という言葉だ。 悔しさやCS出場の連続記録が途切れてしまったことへの失望感はもちろんあっただろう。ファジーカスの引退というエモーショナルな出来事を迎える前日という状況もあり、この言葉はある意味ではドライでもあった。しかし、それ以上に結果を受け止めてクラブとして前に進まなければいけないという決意──この言葉からは篠山のそんな心境を、そして今季の川崎の苦悩を垣間見た。 ファジーカスの引退に伴い、川崎は否が応でも再建に向かうことになる。Bリーグ開幕以降は毎年ロスターチェンジはしながらも、ファジーカスに合う選手を探しながら篠山、藤井、長谷川らコアメンバーを変えずに戦ってきた。だが、全ての中心であったファジーカスが去る来季は大改革が予想される。どんなコンセプトで誰を中心に据えたチーム、文化を作っていくのか。それは北卓也GMをはじめとしたフロント陣に託された最重要タスクだ。 チームメイト、そして友人としてファジーカスの相棒となったジョーダン・ヒースはどうなるのか。フィジカルでサイズもあり、ショットクリエイターにもなれる今が全盛期のトーマス・ウィンブッシュとロスコ・アレンは引き止めるのか。自らのプレーで出番を勝ち得た飯田や益子拓己、野﨑零也にはどんなオファーを提示するのか。そもそも、篠山や藤井らコアメンバーはどうするのか。ファジーカス時代のような強固なチームカルチャーを作り、これから探す自分たちの新たな強みを再構築する。その土台作りとして、このオフシーズンは今まで以上に重要なものとなる。 篠山は言う。 「この結果をしっかりと受け止めてクラブとして…再建と言っていいと思いますが、迷うことなく舵を切るところをしっかり切らないといけないと思うし、改めてニックがいなくなった後の川崎ブレイブサンダースはBリーグの中でどういう存在であって、どういう歴史をここからまた築いていくべきなのか」 「スタッツや試合での活躍だけを見てチームを編成するのではなく、リスペクトし合える人間関係が築けるとか、努力し続けられるとか、そういう人間がいることによってチームとしての文化や強さが築かれていくと思います。再建だからといって、試合にあまり出ていない選手を簡単に切るようなクラブではあってほしくないと心から思います。クラブとしてどういう選手に来てほしくて、どういう選手たちと文化を築いていくのか。その姿勢が大事だと思います」 その口調は力強かった。そして、切実だった。 川崎は来る2025年に創設75周年を迎え、その3年後の2028年には1万人収容の新アリーナも開業予定と、大きな節目を迎える。横浜BCとの第2戦は79-87と黒星。結果としては無念のシーズンエンドとなったが、ファジーカスのラストゲームとなったこの試合は、一時代の終わりであり、新時代の始まりを告げるものでもある。 ファジーカス時代を過去の栄光としてしまうのか、それとも歴史の大切な1ページとして未来につないでいくのか。この夏、川崎ブレイブサンダースの真価が問われる。
取材・文・写真/堀内涼(月刊バスケットボール)