「白馬大雪渓」が雪不足で初の通行止め 解除のめど立たず
夏山人気を集める北アルプスの「白馬大雪渓」(長野県白馬村)が、クレバス(雪の割れ目)の拡大や崩落で登山ルートが危険になったため、9月1日から通行止めになりました。雪不足のためで、白馬村などによると大雪渓の通行止めは前例がありません。周辺山域や平地の雪不足は長い間続いてきたため、温暖化などの影響を否定できないとの見方も。アルプス周辺の自然が気象の変化に敏感に反応し始めたようです。 【写真】多発する冬山遭難 遭難は「出発前」の自宅から始まっている?
クレバスが不安定で登山ルートが危険
白馬大雪渓は白馬岳(しろうまだけ・2932メートル)と杓子岳(しゃくしだけ・2812メートル)に挟まれた大きな谷に形成され、白馬村観光課によると全長3・5キロ、標高差600メートルと大規模。針ノ木岳、剱(つるぎ)岳の雪渓と合わせ日本3大雪渓といわれます。 今年は雪が少なく、雪解けも早く進んだことから白馬村や北ア北部地区山岳遭難防止対策協会、大町署などが8月末に現地調査。その結果、クレバスなどが不安定で危険があるため、通行止めとしました。 通常だと10月中旬の小屋閉めごろまで大雪渓の登山が続きます。今後、様子を見ながら安全なルートの確保ができるか検討しますが、「あちこちに雪の割れ目ができていて、通行止め解除の見通しが立っていない」(白馬村)という状態。 このため大雪渓を避ける白馬岳へのルートとして、猿倉登山口から白馬鑓(やり)温泉、白馬鑓ケ岳、杓子岳の縦走ルートと、ゴンドラ、ロープウエーで栂池(つがいけ)自然園を経て白馬大池経由で向かうルートを登山者らに紹介。各所に立て札などを設けて周知を図っています。
何年も前から「雪が少なくなっていた」
白馬尻小屋では、県外から訪れた登山者が「ここへ来て通行止めを知った。数年前に来たのは7月だったので小屋の前まで雪渓があった。その印象が忘れられない」と残念そう。 猿倉登山口で客待ちをしていた地元の中年のタクシー運転手2人は「長いこと仕事をしているが、大雪渓の通行止めなんて初めてのこと。驚いた」と話していました。 白馬村の篠崎孔一観光課長は「昨年の冬以来の雪が少なくて雪が堆積しなかった。何年も前から雪が少なくなったと誰もが感じていたので、温暖化の影響ではないかという見方も出てくると思う」と話しています。 今年は春から涸沢(からさわ)や上高地など北アルプスの各所でも雪が少ないといわれていました。雪不足や気温の上昇が続くと、雪渓のルートに限らず春先の雪道の確保などに影響も予想され、来シーズンに向け山岳関係者や登山者の懸念も生じそうです。
----------------------------------- ■高越良一(たかごし・りょういち) 信濃毎日新聞記者、長野市民新聞編集者からライター。この間2年地元TVでニュース解説