どうなる、どうする開幕投手?未定は横浜DeNAと中日の2球団
開幕当確が出ても良かったが、与田監督はそれを口にしなかった。 「投げる度に安定感が増した。何球か抜ける、ひっかけるというボールもあったが即座に修正していた。大野のリードも良かった。ピッチャーによって(ミットの)構え方、構える場所も工夫してくれと、お願いしてきたが、色々やってくれている。開幕は笠原が有力? 頭の中には、色んな青写真があるが、正確な色に変わるかどうか。この試合が良かった、ということだけじゃ決められない。キャンプから吟味して1年の戦いを考えて決めたい」 笠原自身も「それは監督が決めること。僕はオープン戦をしっかりと調整することだけを考えていて特に開幕は意識していない」と言う。 与田監督が考える開幕投手の条件とは何なのか。 「チーム方針にしっかりとあてはまるか、どうか。それがひとつの条件になる」 その「チーム方針」を聞き直す。 「どういう形で(ドラゴンズが)進むか。それを示すということですよ」 ――与田監督は“勝つ”をテーマに掲げた。それを気持ちで表現できる投手なのか、これからの中日の未来を背負っていくエースを指名するのか? 「それらもひとつ。まあ誰を使っても賛否両論はあるでしょう。ただ、僕の考えは開幕は、あくまで1試合。そこに大きな比重を置いていない。143分の1という考え方。(開幕投手によって)チームの考えを伝えたい。今、その場、その場で、良かった、悪かったで決めることは考えていないんです」 与田監督に投げかけられたのは開幕投手論である。
開幕投手には大きくわけて2つの考え方がある。あくまでもローテーの最初に投げるだけの143分の1試合と考え、シーズンを通じてのエースとしての責任、使命を重要視するのか、それとも単なる143分の1試合ではなく開幕からチームに勢いをもたらす開幕ダッシュの象徴としての役割を持たすのか、という2つの理論だ。メジャーはどちらかと言えば前者。栄誉ではあるが、日本ほど特別視はされていない。一方、日本では後者の考え方を持つ首脳陣も少なくない。 開幕の独特の緊張感や、そこまでの努力を考えると、開幕投手の勝敗が、1年間の戦いに大きな影響を及ぼすという考え方だ。 この両方の定義の間を取ったような手法もある。 2004年に中日の落合監督は、誰もが予想しなかった川崎憲次郎を開幕投手に指名したことがある。FAでヤクルトから移籍後、故障に悩み3年間、1試合も1軍登板のなかった川崎を監督就任1年目の落合監督は抜擢したのである。結果的には、序盤にKOされてサプライズ登板は失敗したが、試合には逆転勝利。その年、川崎は1勝もできないまま引退することになったが、落合監督が考えていたのは、シーズンを通じて相手のエースと自軍のエース、川上憲伸とのマッチアップをずらす、という考え方だった。ドーム球場が増えた現在では、開幕投手にエースを起用すると、その後も年間を通じてエース対決が続く。だが一人ずらしておけば、エースは相手のひとつふたつ落ちる先発とマッチアップすることになり勝ち星と貯金が計算できる。実際、この年、川上は、17勝7敗で最多勝を獲得して優勝に貢献した。 予告先発が採用される現在では、落合式のサプライズは通用しないが、1年をトータルで考える理論は一理ある。 中日を追いかける他球団スコアラーの話を聞くと「開幕は笠原でしょう」との見方が濃厚。143分の1試合の考えと「ドラゴンズが今後、どう進むか」という与田監督のメッセージを読み解くと、昨年途中からローテーに固定され、昨秋の日米野球で侍ジャパンにも抜擢されるなど、これからの中日の屋台骨を背負って立たねばならない23歳の笠原が当てはまるが、過去に2度の開幕投手を経験している大野、3度経験のベテラン、吉見も候補ではある。与田監督は、いったい誰を開幕投手に抜擢するのだろう。