フリーアナウンサー・神田愛花『「ぽかぽか」2年目!病欠で見えた新事実』
今、平日の午前10:00。本来なら、フジテレビ系『ぽかぽか』出演のために楽屋でメイクをしている時間だ。だが今日は自宅のベッドに横たわり、iPhoneでこの原稿を書いている。朝起きたら発熱していて、初めて病欠した。 【画像】個性あふれる神田愛花さんの直筆イラスト(1回~42回)はこちら 『ぽかぽか』は昨年1月にスタートした。当初は、現場の雰囲気に慣れること、ハライチのふたりと心の距離を縮めること、「アナウンサーではなく″プレイヤー″として存在してください」という制作陣のリクエストを理解することに試行錯誤していた。表面上では毎日、斬新なコーナーを楽しみながらも、頭の中では険しい顔。(一日でも早く自分の存在意義を確立し、自信を持って臨みたい!)という気持ちで、埋め尽くされていたのだ。 だが、1年経った今、本番中の気持ちが180°違う。とにかく、楽しい! その日のゲストに、「◯◯っぽい」という勝手なイメージを提示してお話を伺う″ぽいぽいトーク″のコーナーでは、ゲストに対して私が本気で抱いてきた偏見を質問させてもらっている。 この時、私の感覚がズレ過ぎていて、会場が「は? 何言ってるの?」という空気になることがある。そんな時、これまでなら、(また変なことを言っちゃったみたい……)と悩んでいた。でも今は悩まない。なぜなら澤部佑さんが「神田さんはコレを本気で思ってますからね!」と言ってくれたり、岩井勇気さんが「コレが一番、聞きたかった!」と言ってくれたりするからだ。ハライチのふたりが笑いに変えてくれることで、引いてしまったお客さんが戻ってくる。すると弱気になりかけていた私は、(そうなの! 本気で思ってたの!)と奮い立ち、自信を持って質問を続けられるのだ。 また、数あるクイズコーナーも、私は本気で正解を狙って答えている。通常、番組の中心となる演者は、周りとのバランスを考えて答えを調整したり、ボケたりする。頭ではわかっているが、そのタイミングに気づけなかったり、何と答えたらボケや調整になるのかがわからなかったり……。そんな時、これまでなら、(私はバラエティに向いていないんだ……)と悩んでいた。でも今は悩まない。岩井さんが、私の解答を横からチラッと見てご自身の解答を調整してくれるからだ。それで私は何の心配もなく、心のままに「コレだ!」という解答を出してクイズを楽しめるのだ。 ふたりのおかげで、『ぽかぽか』に夢中。1年前のように、自分の存在意義がどーのこーのと考えている暇は、なくなった。 ◆愛花は独りじゃない! だがここでまた、新たな悩みが。こんなに夢中になると、自分や番組を客観視できなくなるんじゃ……という心配だ。良い番組をお届けするには、まず自分が本気で楽しむことが大切! ただ、それだけでは視聴者が置き去りになってしまう。バランス感覚が必要だ。しかしそのバランス感覚……きっと私にはない。 昨年末、この悩みを演出担当のヨシタカさんに打ち明け、「度が過ぎるようなら私を注意してください」とお願いした。すると「僕もそう思ってました! 了解です!」とのこと。発想が奇想天外で、生放送でギリギリの企画も実行してしまうクレイジーボーイ。その彼が私の悩みを理解してくれているおかげで、安心してさらに夢中になれるのだ。 番組開始から1年。この番組には、私の悩みが誰かの助けによって解決される仕組みがあると思えて、計り知れない有り難さを感じた。 と、1年前と今の心境を比較していたら、11:50に。私が不在の『ぽかぽか』生放送が始まった!! 澤部さんが私の病欠を説明すると、岩井さんは「可愛い担当が僕だけになっちゃいました」と笑いを誘う。続いて澤部さんが「神田さんは、自分がいない時に滞(とどこお)りなく番組が進んじゃうと、寂しがっちゃう人だからねぇ」と。そして画面越しに、「だからわざと、ぎこちなくやりますからねぇ!」と私に向かって言った。 もう感激だった。あのふたりは本当に私のことをよく理解してくれている。普段″あなたのことをわかっていますよアピール″をしてこないから、こういう瞬間に突然気づかされるのだ。嬉しくて(なんなのよ、もー! ふたりともー!!)と胸が熱くなり、寝室のテレビに映るふたりに向かって、「イエーーース!! その通りよー!!」と叫びながら手を振った。 かんだ・あいか/1980年、神奈川県出身。学習院大学理学部数学科を卒業後、2003年、NHKにアナウンサーとして入局。2012年にNHKを退職し、フリーアナウンサーに。以降、バラエティ番組を中心に活躍し、現在、昼の帯番組『ぽかぽか』(フジテレビ系)にメインMCとしてレギュラー出演中 『FRIDAY』2024年3月15日号より 文・イラスト:神田愛花
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