私たちは何に立ち向かっているのか…『セクシー田中さん』『クロエマ』ほか、シスターフッド漫画の“現在地”を考える
毎月100冊以上の作品を読むマンガライター、ちゃんめいさんと“女性たちの関係”を描いた「シスターフッド漫画」の現在地を探ります。海野つなみさんの最新作『クロエマ』、ドラマ化で話題の芦原妃名子さんの『セクシー田中さん』など、令和の漫画作品に描かれる“シスターフッドの多様性”とは…? 【画像】『ブスなんて言わないで』、『セクシー田中さん』、『クロエマ』のグッとくる場面
シスターフッド作品はなぜ増えた?
昨今、シスターフッドを題材とした作品を多く見かけるようになりました。そもそもシスターフッドとは、1960年代~80年代にアメリカで起きた女性開放運動のなかで盛んに使われていた言葉。男性優位の社会を根本から変えるために、女性同士が連帯することを意味するものでした。 その後、ジェンダー平等推進や#MeToo運動などの時代の変化を受け、再び注目されるようになったシスターフッド。今では現実世界だけではなく、女性たちが強い絆を育みながら同じ目的に向かって共闘する……という一つのストーリーラインとなって、映画や小説はもちろん、漫画といった創作の世界でも浸透しつつあります。
絆だけではなく、立ち向かう物語を
今回は、そんなシスターフッドがテーマの漫画「シスターフッド漫画」についてお話ししていきたいのですがその前に。最近、シスターフッドの名を冠した作品が本当に増えたなと思います。もちろん女性が主体の物語が増えるというのは、同じ女性としては非常に勇気付けられるので大変嬉しいことです。けれど、ただ女性たちの強い絆やハイテンションな友情だけを見せられてシスターフッドと言われてしまうと、なんだかちょっと首を傾げたくなります。(もちろんそういった作品も爽快感があって好きですが) やっぱりシスターフッドという言葉の歴史、そして再び注目された背景に立ち返ると、女性たちの絆だけではなく、女性であるがゆえに課せられる苦しみや歪な社会的構造に立ち向かう物語が描かれていること。それこそが“シスターフッドの作品”なのではないかなと思うのです。
敵はルッキズム! でも私たちは“違う”『ブスなんて言わないで』
そんな私が「シスターフッド漫画」として一番に思い浮かべた作品がこちら、とあるアラ子先生の『ブスなんて言わないで』です。 本作の女性たちが立ち向かうのは「ルッキズム(容姿差別)」。人を見た目で判断する価値観はおかしい! と、現実世界でも警鐘が鳴らされているルッキズムですが、なんだかただのポーズになっているなと感じることってありませんか? 例えば、多様な美しさを受け入れようというわりには、一歩外に出ればコンプレックス広告の嵐。雑誌を開けば、ありのままのあなたが美しいとか、美しくない女性なんて1人もいない……となんだか聞こえの良い言葉たちが並びます。 ブスと罵られ学生時代に壮絶ないじめを受けていた知子、美人であるがゆえに勝手なイメージを植え付けられてきた美容家・梨花、容姿いじりで笑いを取ってきた芸人・デパ子……。『ブスなんて言わないで』は、多様な人生を歩んできた女性たちの目線で、まるで言葉だけが独り歩きしてしまっているような“現代におけるルッキズムの歪さ”に切り込みます。 それぞれルッキズムに対して異なる辛さを抱えているからこそ、時には衝突もするし、見据えているゴールも違う。けれど、対立し合う相手でもあっても共闘はできる。“違う”からこそ生まれる、女性たちの連帯にぜひ注目してみてください。