アバクロ元CEO、無罪主張 性的人身売買の罪で公判
マデリン・ハルパート、リアナ・クロックスフォード調査編集委員 米アパレル大手アバクロンビー・アンド・フィッチの元最高経営責任者(CEO)は25日、性的人身売買などの罪状について無罪を主張した。 マイク・ジェフリーズ元CEO(80)とそのイギリス人パートナーらが、売春の斡旋(あっせん)と国際的な性的人身売買ビジネスを行っていたとして米当局に逮捕・起訴された事件で、ジェフリーズ被告はこの日、ニューヨーク・ロングアイランドの連邦地裁で開かれた罪状認否公判で、性的人身売買と複数の州をまたがる売春について無罪を主張した。 無罪の主張を弁護団が代弁する横で、紺色のスーツ姿の被告は無表情のまま座っていた。その後ろには、犯罪行為の仲介者として起訴されているジェイムズ・ジェイコブソン被告(71)が座っていた。ジェイコブソン被告も、続いて無罪を主張した。 同様に起訴されているパートナのマシュー・スミス被告(61)は後日、出廷する予定。 連邦検察当局は、被告人たちが威力と詐欺と強要を通じて「暴力的で搾取(さくしゅ)的」な性行為に及んだと主張した。 ロングアイランドの連邦地裁でスティーヴン・ティシーニ裁判長は、10分間で終わった公判の最後に、ジェフリーズ被告に自宅軟禁を言い渡した。ニューヨーク州とフロリダ州の自宅からの外出が許されるのは、病院での予約、弁護団との打ち合わせ、宗教行事への出席に限られると指示した。 ジェフリーズ被告はニューヨーク・フィッシャーアイランドの自宅を担保に、保釈保証金1000万ドルを納めた。 ジェフリーズ被告は次回、12月12日に出廷する予定。 ■被害訴えた男性、傍聴席に 連邦捜査局(FBI)は昨年、BBCの調査報道で複数の男性が被告たちが各地で性的加害を重ねていたと主張したのを受けて、捜査に着手した。 被害を訴えてBBCの調査報道に協力したデイヴィッド・ブラッドベリー氏はこの日、傍聴席の最前列に座り、検事による罪状読み上げを聞いていた。 BBCは当初、ジェフリーズ被告とスミス被告による性行為が伴うイベントに参加したり、開催にかかわったりしたと話す男性12人から話を聞いた。 (注意:この記事には性行為の描写が含まれます) 被告らを逮捕・起訴したニューヨーク州東部地区連邦検察局のブリオン・ピース検事は22日、ジェフリーズ被告がアバクロンビー・アンド・フィッチのCEOとしての富と権力、地位を利用し、自身とパートナーのスミス被告の「性的快楽のために男性を人身売買していた」と主張した。 ピース検事は、このカップルがジェイコブソン被告をスカウト役として雇い、世界中の男性を対象に、金銭と引き換えに性的行為を強要する「トライアウト」を行っていたとした。 ジェフリーズ被告が男性たちを承認すると、男性たちはニューヨークの同被告の自宅へ移動させられ、そこで「アルコール、バイアグラ、筋弛緩剤を摂取するよう強いられた」とピース検事は述べた。 同検事はさらに、行為に参加できない、あるいは参加したくないと言った男性たちに対して、ジェフリーズ被告とスミス被告は誰かに命令して、あるいは自らすすんで「勃起誘発物質を注射した」と主張。 ジェフリーズ被告が「この企てを支援し、その機密性を維持するために、大規模なインフラに数百万ドルを費やした」とした。これには、国際的な移動、ホテル滞在、有給のスタッフ、イベントの警備などが含まれるとした。 ピース検事は、起訴状に記載された被害者は15人だが、この企てには「十数人の男性たちが関与していた」と主張した。 BBCによる最初の調査報道の後、アバクロンビー・アンド・フィッチは疑惑について独自調査を開始すると発表した。しかし、BBCが先に、この調査がいつ完了するのか、また調査結果が公表されるのかを問い合わせたところ、同社は回答を拒否した。 ジェフリーズ被告やスミス被告と同様、アバクロンビー・アンド・フィッチも、ジェフリーズ被告が主導したとされる「人身売買ビジネス」を知らなかったと主張。民事訴訟の棄却を求めている。 ジェフリーズ被告は2014年、売り上げ減を受けてCEOを退任。当時の申告によると、退職金パッケージは約2500万ドル相当の内容だった。 (英語記事 Ex-Abercrombie CEO pleads not guilty to sex trafficking charges )
(c) BBC News