「魔物はね、いないんです」谷亮子さんがパリ五輪柔道女子代表に金言「魔物を実感したという方の話も聞いたけど…」
「ヤワラちゃん」の愛称で親しまれ、柔道の女子48キロ級で一時代を築いた谷亮子さん(福岡市出身)が30日、東京都内でパリ五輪女子78キロ超級日本代表の素根輝(パーク24)=福岡県久留米市出身=ら五輪代表内定者など約30人を前に講演。1992年のバルセロナ五輪から2008年の北京五輪まで5大会連続出場。頂点を極めた2度を含めて、出場した全ての大会でメダルを獲得した自身の経験などを踏まえ語った。 ■「レジェンドが渋滞です」野村忠宏さんら超豪華4ショット【写真】 4年に1度の五輪。誰もが全てを懸けてたどり着いた最高峰の舞台で、自身の持つ力を余すことなく発揮することは難しく、時には「魔物」とも表現される。ただ、谷さんは「魔物はね、いないんです」と言い切った。 その上で「でも、実際に魔物を実感した方の話も聞いたことはあります。だけど、そこは自分の気持ちの持ち方次第。魔物と感じるのか、感じないのか。そこに視点を向けるよりも、闘いを組み立てる方に持っていくことによって、消えていくと思う。目の前の試合に集中して。勝つことを前提に試合に臨む、強い気持ちでやっていくと良かった」と〝魔物退治〟の策も伝授した。 初出場した1992年のバルセロナ大会で銀メダル。金メダルを期待された96年のアトランタ大会も再び銀メダルとなり、その直後は強い失意にも襲われたという。2000年のシドニー大会に向けて「シドニーに出られる保証もない。チャレンジしていいのか、できるのかな。あと4年もあるな、という思いはあった」と葛藤があったことを明かした。ただこうも思った。「このままもし五輪を目指さなかったら、多分引退したり、将来お母さんになった時に、チャレンジしてないと後悔するんだろうなっていう自分がいた。ですから私はチャレンジをやめるより、チャレンジにトライしました」とシドニー五輪での金メダルにつながった秘話も語った。 このほか五輪の約1カ月前から試合当日を想定する日を設けた逸話も披露。起床から就寝までを五輪の当日と設定して徹底的に予行演習したという。「五輪が何ら特別でないことを実現できた」とも話した。 選手からの質問にも丁寧に答えた谷さんは「パリもすぐやってくる。世界選手権も2週間ほど。本当にあっという間。パリでは『パリでも金、やっパリ金』という感じでぜひ頑張ってほしいし、応援しています」と、自身の現役時代の名言にかけながら熱いエールも送った。 講話を終えた谷さんは「何か力になれることがあればといつも思っていました。実現できて大変うれしく私も思ってます」と笑顔を見せていた。
西日本新聞社