にしおかすみこ「家族が亡くなってしまっても私の人生は続く」認知症の母、ダウン症の姉、酔っ払いの父との向き合い方とは?笑えて泣ける日々を赤裸々に語る
「自分の時間があって、好きな仕事ができて、楽しく暮らせればいいかな」
――家族のお世話をしながらお仕事もされています。忙しい中でどのようなルーティンで書いているのでしょうか? どうしても家族に振り回されがちにはなるので、ルーティンはないんですよね。仕事の帰りの電車でちょこちょこ考えたり、カフェや事務所に行って考えたりとか、なるべく隙間を縫って書く時間を作るようにしています。 出かける時は3人分のご飯を作り置きしていますが、自分の分はお皿等の洗い物をひとつでも減らしたかったり、面倒くさかったりで、フライパンから直接食べたりしちゃうことも。でもこうやって自分に対して気を遣わなくなっていくのは楽だけど、楽しくはないなあと思い直して、なるべくお皿に入れて食べるようにしています。 ――歯医者さんの帰り道で「歯がなくなった!」と騒ぐお母さまのエピソードや、家族の下着を自室に溜めこむお姉さまの様子など、一筋縄ではいかない現実も書かれています。特に介護の渦中にいる人にとっては、肯定される気持ちになる内容なのではないでしょうか。 介護の役に立つ、情報があるという本ではないので、そういう方の箸休めになったり、笑ってもらえたりすることが1番うれしいです。 ――『窓ぎわのトットちゃん』(黒柳徹子/著)になぞらえた、お母さまの「娘たちの個性を大切に育てる」という思いの詰まった番外編エピソードは泣けました。 母からしたら個性を大事に育てたら、どうしてだか「SMの女王様キャラ」になったという(笑)。母には、1冊目出版の時にうれしくてつい「家族のことを書いた本が出る」と伝えてしまいましたが、もう覚えていないかなあ。どうですかねえ。 胸を張って出している本ですが、母が読むと、娘にこんなにも迷惑をかけているのかとか落ち込む気がするので、もうあえては伝えないです。 ――お父さまとのケンカで傷ついたにしおかさんを抱きしめたり、にしおかさんの行く末を案じたりと、お母さまの言動から面倒はみてもらっていても娘は「いつまでも子どもなんだ」という思いが垣間見られました。 小さい頃の記憶とか、私が覚えてないことを母が覚えているんですよね。だから、私が実家に帰ったことで、私自身が忘れていたことを思い出したこともあって。私も母との思い出が増えた気がしています。 ――家族と向き合う中で大切にしていることは? 母に関しては、まだできることもたくさんありますが、難しくなっていることもあって、見ていて不安な時もあるんです。だけど、私が心配だからといって「ダメ」と言うと、母の行動範囲が狭くなってしまうので言わないです。 例えば「スーパーに行ってくる」となったら、「帰ってこれなくなったらどうしよう、転んだらどうしよう」と心配になる。もし何かあったら後悔しますけれど、もうそれも本人の人生だからと割り切るようにしています。介護というよりは、「とりあえず見守る」という感じです。 母も姉も携帯を肌身離さず持っているので、そこにアプリで追跡できるストラップ型の「AirTag(エアタグ)」をつけたのですが、思った以上に自分がホッとしたんですよね。まだ迷子になってないし、帰れなくなったこともないんですけれど、私の心の安定のためにも良かったなと思います。 ――家族と向き合う中で、どうしてもつらくなり、長野県へ”家出旅”をしたとも書かれています。日々の生活でのリフレッシュ方法は? 時々、友人や先輩に愚痴を聞いてもらったり、高いランチを食べに行ったり。ウォーキングやホットヨガに行って汗をかいたり、野菜の彫刻「ベジタブルカービング」をしたりと、小さく息抜きをしています。 自分がちょっと寝不足なだけでイライラがつのったり、いつもだったら許せる言葉が、カンに触ったりということがあります。そんな時は「自分ファースト」と思い直します。自分が元気じゃないと誰も幸せにできないので、自分の幸せを1番に考えます。 時間がなくても、全部捨てても、後で後悔しても息抜きしに行きます。それくらい思わないと自分の時間なんて作れません。皆さんにも自分を1番大切にして、幸せであって欲しいと思います。 ――自分の幸せということについて、2冊目発売記念のインスタライブでは、恋愛や結婚についても語っていました。 介護は関係なく、1人暮らしの頃から恋の仕方を忘れちゃってて、きっと結婚はしないと思いますけれど、絶対にしないという理由もないです。今のところ自分の時間があって、好きな仕事ができて、楽しく暮らせればいいかなという感じです。 年齢順でいったら家族の中で最後に残るのは私です。家族が亡くなってしまっても私の人生は続くので、自分が健康で楽しく幸せであるというのを常に念頭に置いておきたいです。
めざましmedia