中国に接近する英国 アジアとは違う対中目線
欧米主要国であり、かつての覇権国家だったイギリスが、中国の提唱する「アジアインフラ投資銀行(AIIB)」に参加を決めたことは、日本でも衝撃を持って伝えられました。10月の中国・習近平国家主席の訪英時にも、イギリスは国を挙げた歓待を行い、ロンドン市場で元建て短期国債が発行されました。中国は人民元の国際化を目指しており、このロンドン市場での短期国債発行やSDR採用によって、その実現に近づいています。イギリスと中国が結びつきを強める背景には、どのような思惑があるのでしょうか。 【図】「アジアインフラ投資銀行」創設メンバー57か国
中国金融の夢だった人民元の国際通貨化
国際通貨基金(IMF)は先月末、特別引き出し権(SDR=Special Drawing Rights)の構成通貨として中国の人民元も採用することを決めました。SDRとは、全世界共通の通貨単位を表し、構成通貨はこれまで米ドルとユーロ、英ポンド、日本円の4通貨でした。今回の決定で5通貨目の採用となります。 来年10月以降、5通貨のSDR構成比は、米ドル41.73%、ユーロ30.93%、人民元10.92%、円が8.33%、英ポンドは8.09%となります。人民元がドル、ユーロに次ぐ第3位。これで人民元は通貨取引において、一定の割合で使用できることになりました。 実際に、人民元の通貨シェアは国際銀行間通信協会(SWIFT)によると2015年8月次が2.79%で、はじめて日本円(2.76%)を上回り、第4位となりました。シェア1位は米ドル(44.82%)で、ユーロ(27.20%)、ポンド(8.45%)です。流通量でいえば、国際間取引に使えないというほうが不便という現実のあるわけです。SDRへの採用決定は、流通量という実績に国際的な信用というお墨付けが与えられたというわけです。 また、そのひと月前に行われた10月21日の習近平・中国国家主席の訪英と英国キャメロン首相との会談の際には、ロンドン市場で中国国外初の元建て短期債が発行されました。中国は「人民元の国際化」を目標としていましたが、SDRへの採用にとって、名実ともに達成されたといえるでしょう。