テレビ演出家が仕掛ける異色エンタメ 音楽と落語の融合で目指す新たな化学反応
多様性を追求する“エンターテイメント・ビュッフェ”
数々のテレビ番組やコンテンツをプロデュース・演出してきた西田二郎氏が、50歳という人生の転換期に「空から声が降りてきた」という神秘的な体験をきっかけに歌手としての活動を開始した。現在はNj名義で日本クラウンからメジャーデビューを果たすなど、マルチな活動を展開している。7月に開催され、大きな反響を呼んだ86歳のジャズシンガーとの異色コラボから5か月。待望の第2弾となる今回は、音楽の枠を超えて日本の伝統芸能・落語との融合に挑む。 現代社会では、単一の価値観への同調や画一化の圧力により、真の多様性が失われつつある。そんな中で本質的な多様性を追求した結果にたどり着いたのが「Njカーニバル」というスタイルだという。7月に開催された第1回では、事前情報なく参加した観客からも「不思議な感動」「かつて味わったことのない高揚感」など、予想を超える反応が続出。既存のエンターテインメントの枠に収まらない新しい体験として、異様なまでの高評価を獲得した。 「音楽には抽象性という特徴があり、好き嫌いがはっきりする一方で、理由なく伝わっていく圧倒的な力があります」とNjは語る。「そんな音楽をベースにして、さまざまな人の生きざまや考え方が、ジャンルも国境も年齢も超えて融合できる。それがNjカーニバルの本質なんです。今回は落語家の桂枝太郎さんにも参加していただき、アコースティックな空間で落語を演じていただきます。枝太郎さんもチャレンジングな場所での高座を積極的に行われている方なので、戸惑いを感じながらもこの融合から生まれる化学反応が本当に楽しみです」
Njカーニバルの特徴を「エンターテイメントのビュッフェ」と表現するNj。「ビュッフェって楽しいですよね? 何を食べようか、どれだけ食べようか、その選択自体がワクワクしますよね。Njカーニバルでも同じように、さまざまなエンターテインメントを自由に楽しんでいただきたいんです。いろんな価値観をどんどん融合させて、いずれは東京だけでなく、大阪や日本中に広がって、最後は武道館に集結できたら」と、屈託のない笑顔で夢を語る。その無邪気とも言える表情が、不思議と周囲を巻き込む力を持っている。 今回参加する落語家・桂枝太郎も「Njさんからのオファーを聞いた時は本当に驚きました。しかし、この異空間での高座は、落語の新しい可能性を開く機会になるかもしれません。通常の寄席とは違う、音楽との融合の中で落語を演じることに、新たな挑戦としての期待を感じています」と意欲を見せる。 今回は学生時代に合唱コンクールなどで多くの人々の心に残る『大地讃頌』の全員合唱も企画されている。合唱指導を担当する“いとやん”こと伊東綾子氏は「当初は知人同士での小規模な合唱を考えていたのですが、Njさんに相談したところ『カーニバルで皆でやろう』という話に発展。これこそがエンターテインメント・ビュッフェの醍醐味。新しい出会いや価値観との接点に、私自身も大きな喜びを感じています」と語る。 関わる人々を自然な形で巻き込み、いつの間にか新しいムーブメントを生み出すNjならではの演出力とプロデュース力。その手腕があってこそ、既存の枠組みを超えた新しい価値が生まれていくのだろう。AI推薦システムやSNSのフィルターバブルにより、自分の好みに合わせた情報だけに囲まれがちな現代だからこそ、これまで接点のなかった価値観と出会えるNjカーニバルは、重要な意味を持つのかもしれない。 Nj carnivalは12月7日に東京・板橋のマリーコンツェルトで開催される。
ENCOUNT編集部