日本の食文化を世界に発信 「NARISAWA」2代目の現在地:成澤レオ
未来は毎日の積み重ねの先に
そうした文化は、信頼関係のある生産者から教わることも多い。成澤は世界を広く旅するだけでなく、幼い頃から50軒以上の日本各地の生産者を父と共に訪問し、一つの食材にかけられている手間と愛情を、身をもって実感してきた。それは「日本の食の素晴らしさを伝えなければ」という責任感にも近い思いにつながっていった。 重ねてきた経験を「食材」だとするならば、あとはそれをプレゼンテーションという形で「料理」するだけ。だからこそ、国際会議のステージでも、レストランでも、裏付けのある生きた言葉で語ることができる。 成澤のもう一つの強みは、抜群の味覚だ。NARISAWAでは、食材は基本的に全てオーガニック、化学調味料は一切使わない。それは家庭でも徹底されていた。その味覚に磨きをかけているのが、店で月に1度、営業をクローズして行われるテイスティングだ。提供し得るすべての料理とワイン・日本酒・茶などあらゆるドリンクの組み合わせを徹底的に合わせ、ベストな組み合わせを見つけていく。 店に関わるようになって4年、今はサービスから二代目シェフになるべく料理を学んでいる。日本には百年以上続く料理店も存在するが、イノベーティブを謳い世代を超えて続く店は、世界的に見ても多くない。幼い頃から世界の美食に触れてきた英才教育とも言えるアドバンテージは、海外に憧れすぎることなく、また、日本という軸をぶらさず、事業を受け継いでいくバランス感覚にもつながっていくだろう。キャリアはまだスタートしたばかりだ。 「一番影響を受けたのは父」であり、20年以上真っ直ぐにお客様と向き合い続けてきたことを尊敬しているという。「毎日をきちんと積み重ねた先にしか未来はない。結果として、何十年も先にNARISAWAがお客様に愛されるものとして残っていったら嬉しいですね」 --- なりさわ・れお◎2000年生まれ。高校から米国にわたり、コネチカットカレッジに進学。在学中の20年春にコロナ禍で帰国し、レストラン「NARISAWA」に勤務。父である由浩シェフとともに、医療従事者、ウクライナ避難民のための支援プロジェクトなども手がける。 ※Forbes JAPAN 2024年10月号(8月23日発売)の本記事掲載時、執筆者の記載に誤りがございました。正しくは「仲山今日子=文」です。関係者並びに読者の皆様に謹んでお詫びいたします。
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