今さら外野不足のマリナーズ失態……イチローの今季プレーまだ見れた?!
仮にその経緯をマリナーズが知っていたとしたら? だとすれば、カノが遅かれ早かれ、80試合の出場停止処分を受けることは、開幕の時点で十分に予想出来た。伴ってゴードンを二塁に戻すこと、外野の枠が空くことも想定の範囲内。であるならば、カノの処分の行方を見届けてから、イチローの処遇を決めたとしても、決して遅くはなかったーー。つまり、急ぐ必要はなかったのである。 では、マリナーズはいつ、カノが検査に引っかかったことを知ったのか。 先日、会見に応じたディポットGMは、「(開幕前に陽性反応があったかどうか)コメントできない」と明言を避けたものの、処分が発表される2日前との話もある。 にわかには信じられないが、薬物検査の結果に関しては、大リーグ機構はまず、選手会を通して、選手本人に連絡をするとのこと。その後、選手本人が、代理人や球団に知らせることになるが、どうやら、球団には長く伏せられていたよう。 となると、5月2日の時点ではさすがに予期できなかったということになるが、そのこととは別に、選手との意思疎通を欠き、危機管理の面で後手に回ったことこそ、ディポットGMにとっては、誤算だったか。分かっていれば、彼とて、難しい決断を5月に入ったばかりの段階で下す必要はなかった。 実際のところ、カノの件をいつ球団が把握したか、はっきりしない。一連の経緯は不透明そのもので、多くが翻弄され、今に至る。チームは好調だが、故障者も少なくなく、表向きは安定していても、水の下では、必死に足を動かしている、というのが実情か。 そんな状況とは対照的に、イチローは今も、何事もなかったかのように、試合前の練習に参加している。先日は、6球連続でスタンドへ運んだ。もはや、キャンプ中に痛めた右ふくらはぎの不安はなく、球拾いを兼ねた守備練習でも軽快そのもの。5月26日には、ホームランをもぎ取り、スタンドを沸かせた。 そうして状態が良くなっているのを見れば見るほど、せめてそこまで、見極めを待っていればーーとの思いを、多くが抱く。 あと2週間。あと、2週間だった。 (文責・丹羽政善/米国在住スポーツライター)