東海大福岡のエース佐藤翔斗「自分の実力不足です」最速142キロ右腕が憧れのマウンドで5失点 7年前の旋風再現ならず
◆第96回選抜高校野球大会1回戦 宇治山田商5―4東海大福岡(21日・甲子園球場) ■九州勢はここまで2勝【選抜組み合わせと結果】 憧れのマウンドには苦い思いが残った。東海大福岡のエース佐藤翔斗(3年)は137球で完投したが5失点。「制球が定まらなかった。自分の実力不足です」。優勝候補の早実(東京)を倒して8強入りした7年前の旋風は再現できず、自らに言い聞かせるように言った。 初回は三者凡退と最高のスタートだったが、昨秋の九州大会で見せた走者を出してからの粘り強い投球を見せることはできなかった。打線が同点とした直後の4回は内野のミスや自らの2暴投などから3失点。適時打を打たれずに勝ち越された。 再び追いついた直後の6回は先頭打者を四球で出し、連打で勝ち越し点を奪われた。「出してはいけない四球を出して点に絡んでしまったのが反省点です」。昨秋の反省を踏まえ、選抜大会の課題は四死球を減らすことだった。フォーム修正などで制球力を高める練習をしてきたが、「四死球を出さないようにと考えすぎて甘く入った球を打たれてしまった」。それでも7回以降は無安打に抑えたのはエースの意地。終盤に驚異的な粘りを発揮して逆転勝利を重ねてきたチームに流れを引き寄せようとギアを上げた。 ここまで順風満帆に来たわけではない。中学時代は肘を痛め投げられない時期があった。高校では入学前の練習で右足首を骨折して手術を受け、入学式は松葉づえをついて出席した。1年夏の福岡大会前に足首を固定していたボルトを手術で取ったため、スタンドではなく動画配信で試合を見た。 「うまく歩けなかった」という状態で走る練習からスタートし、1年後の昨夏の福岡大会は5回戦で完封勝利を挙げるなど8強入りに貢献。エースとなった昨秋からは投手のポジションリーダーとなり、昨秋の公式戦は延長タイブレークの2試合を含む6試合で完投し甲子園出場の原動力となった。「走るのは好きじゃないけど練習メニューにあったので」。炎天下でも手を抜かず、苦手な練習をこつこつとこなしたエースは甲子園のマウンドまでたどり着いた。 最速142キロを誇る長身右腕の次の目標は、戦国の福岡大会を夏に勝ち抜いて、このマウンドに戻ってくること。「野手が崩れたときに自分がどうするか。考え方を学んでいきたい」。今回も含めて3度の甲子園出場は全て選抜大会。心も体もアップデートして同校初の夏の甲子園に駒を進め、勝利を挙げてみせる。(前田泰子)
西日本新聞社