ABCが阪神・淡路大震災20年で検証フォーラム ── 正木明さんら発生時の状況など報告
報道は、何ができて、何ができていないのか──。17日で「阪神・淡路大震災」発生から20年を迎えるのを前に、大阪のテレビ・ラジオ局「ABC朝日放送」が10日、災害報道のあり方を考える「阪神・淡路大震災20年フォーラム『災害とメディア』」をABCホール(同市福島区)で行った。満員の会場で行われたフォーラムでは、震災発生時に生放送を担当し今も続けて同局で天気コーナーを持つ気象予報士の正木明さんによる報告や、評論家の荻上チキさんがコーディネーターとなりパネルディスカッションを行うなど、同震災の教訓をこれから先もどう伝えていけるかといった議論が繰り広げられた。
『どんな報道をすれば』を検証したい
このフォーラムは、この20年で東日本大震災などの大地震がいくつか発生。「いつも起きてから、あーでもない、こーでもないという論議の対象になるが、メディアとして『どんな報道をすれば』ということを検証しながらフォーラムをしたい」と企画が進められた。 企画の中心メンバーは、同局広報局OPEN↑(オープンアップ)推進部部長で、長年ラジオのプロデューサーとして活躍した「ABCのジャイアン」こと淺尾武史さん(47)や「サンデープロジェクト」「ムーブ!」などの元プロデューサー、古川知行さん(64)さん。同局報道部記者で、現在、社内研修制度で「人と防災未来センター」の研究調査員としても活動する木戸崇之さん。 古川さんはもうすぐ定年を迎える。「これまでの反省を込めながら『こんなことできる』『こんなことはできない』とか、でけへんことはあからさまに話し、今の形ではこんなことできるとかいうのを正直にできれば。ある意味20年というのが、体験をした方の話しをしっかり聞きながら議論しあえる最後の機会やと思う」と力を込めて話していた。
震災発生時、生放送に出ていた正木明さん報告
フォーラム第1部では「震災のその後の現状とメディアの課題」と題した報告会が行われ、同局報道記者らが現場取材を重ねながら得た、神戸市長田区を中心とした再開発による復興災害の現状、災害発生時に行われる緊急放送の仕組みやその訓練の様子を細かく説明した。 また、震災発生時に在阪テレビ局の中で唯一「おはよう天気です」を生放送。それに出演し、現在も「おはよう朝日です」などの番組で天気予報を担当する正木明さんが登場した。 正木さんは、当時の映像を使いながら「当時、私は生放送中でした。午前5時45分に本番スタート、その約2分後に地震が発生。照明がゆれ、チリやほこりで視界が悪くなった。これ以上続くとスタジオが破壊されると思う寸前で揺れが小さくなったが停電し映像は途切れた」スタジオで何が行ったかを事細かに説明。その時、気象庁から送られてきた震度情報は「岐阜、四日市 震度4」といったものしかなかった。正木さんはこの時「東海地震が起きたのか。大阪でこの揺れ、じゃあ東海はいったいどういうことに」と思ったという。 生放送停電後は音声だけが復旧。5分後に映像が復旧し、その時伝えた第一声は「先ほどの地震は東海地方が中心のようですね」というものだった。その13分後、新たな情報が来て「震源地は淡路島です」と放送で伝えた。 だが、このようにスタジオには「数字データ」の情報は入ってくるが、それ以外の情報はない。それから約2時間後「おはよう朝日です」放送中に、ヘリコプターから神戸などで高速道路が倒壊するなどした映像を確認。とんでもない被害を実感したのは、この瞬間だったという。