函館の洋芝はふかふかだった 武豊騎手絶賛の芝コース歩いて実感、野芝に代え3種類使用
改めて洋芝って何? 今回の「ケイバラプソディー ~楽しい競馬~」は舟元祐二記者が、函館競馬場の芝コースを歩いた。 【写真】函館競馬場の芝コースを歩く記者 JRAでオール洋芝は函館、札幌のみ。雪は元より、函館競馬場は海も近い。種類、管理方法、夏の北海道シリーズでことあるごとに耳にする洋芝を実際に感じてみた。 ◇ ◇ ◇ 1分7秒9。「速っ!」。今年の函館初日の第1Rで飛び出した勝ち時計に記者席で声が上がった。3歳未勝利戦の芝1200メートルを、武豊騎手騎乗のナムラローズマリーが制した。近10年では1分8秒後半から9秒台が多い。よほど馬場状態がいいのだろう。実際に武豊騎手がレース後「馬場はめちゃめちゃいい」と話していた。すぐ目の前にはきれいに生えそろった洋芝が太陽に照らされていきいきとしている。これはぜひ歩いてみたい。 ふかふかだった。ターフに足を踏み入れた時、足が沈むようだった。以前、中山競馬場の芝コースを歩いたことがある。詳細なことまでは分からない。しかし靴を通して伝わってくる振動が少なく感じた。「本当は野芝がいい」と話してくれたのが函館競馬場施設整備課の植地昌行課長だ。「基本的に野芝が芝コースの形成には適していると考えています。ただ野芝の北限がちょうど北海道の南端にかかるかどうかだと言われています」。JRA全10場のうち、オール洋芝は函館、札幌の2場のみ。少しでも野芝を再現させるべく、JRAに選ばれたのが3種類。1つがケンタッキーブルーグラス。野芝のように根が横に生える。ただ生育が遅いという欠点がある。そこで2つ目のトールフェスク。根は下に伸びるが生育が早い。3つ目も生育が早いペレニアルライグラス。「北海道の冬の寒さ、降雪があるため野芝に代わるこの3種類の洋芝を使用しています」。改めて洋芝使用の理由を知れた。 雪、そして函館競馬場は海が近い。芝管理の課題は多いように思えたが、「土が凍ってしまうのは良くないが、根雪(冬の期間中に積もった雪が、長期間消えずに残っている状態)は必要なんです。潮風からも守ってくれます」。函館名物雪の下大根のようなものか…。つい独り言が出たが、「そうかもしれませんね(笑い)」と対応してくれた課長は優しい。コースを1周し、検量室前の地面がゴムチップになっているところに帰ってくるとズシリと衝撃。違和感で足先がいっぱいになった。「洋芝とのギャップにやられましたね」。ふかふかの洋芝を歩いた後はよくあるそうだ。 開幕初戦の時計はただ馬が強かったという結果。その後の時計はほぼ例年通りだった。「自然が相手なので難しいが、昨年と同じようにできたのではないでしょうか。レースを行ってからも騎手に状態のヒアリングをしています」。じゃああのレジェンドが言った「めちゃめちゃいい」という言葉はうれしいはずだ。毎年同じ質を担保している馬場管理技術に感服した。(ニッカンスポーツ・コム/競馬コラム「ケイバ・ラプソディー~楽しい競馬~」)