今の日本では「結婚=不幸」という風潮の大問題、漫画にも一因?東村アキコ×植草美幸対談
東村:私は独身だけど息子がいて、アシスタントも4、5人、いつもそばにいて、いつもにぎやかにワイワイした中で生きています。そういうことが苦手な人もいるとは思うけど、一生ずっと1人で生きていける人は少ない。「寂しい」と素直に言える社会になってほしい。そうしたら、「この子は結婚願望があるんだな」と思った上司がいい相手を紹介してくれるかもしれない。 植草:昔は「キミもそろそろ結婚しないとね。~課の~君を紹介するよ」という親切な上司がいましたね。今はパワハラ、セクハラと言われちゃう。
東村:私は田舎育ちだから、20代はそういう話がたくさんありました。「うちの息子のお嫁さんに」とか「あそこの店が嫁を探してるから行ってこい」とか。私は漫画家になりたくて東京に出てきたけど。 植草:私がこの業界に入った15、16年前からすでに昔ながらの仲人の先生たちが、「最近のお嬢ちゃんたち、お坊ちゃんたちは結婚しないわね」とぼやいていました。 東村:少女漫画家の立場から言わせていただくと、今の30代ぐらいの子たちが読んできた少女漫画のヒロインは無愛想でツンツンしていて、そういう女の子のことを「おもしろい」と思って飛び越えてきてくれる男こそが本物の男だ、という思想があるんですよ。
可愛くぶりっこしている女を好きになる男は、虚像の女が好きな浅はかな男。ツンツンしているけど仕事はがんばっている女を好きになった男こそ、女の本質をわかっているという理論。 植草:現実には無理ですね、それは(笑)。 東村:無理なんですよ。韓国ドラマもそう。ツンツンして暴言ばかり吐いているけど、お酒を飲んで酔っ払うと泣き始めるヒロインばかり。この現象を私は「韓ドラヒロイン症候群」と呼んでいます(笑)。
■現実的で幸せな結婚をする漫画を描きたい 東村:そういうツンツンした女が素敵な恋に落ちるのは、ドラマや少女漫画の中だけ。それなのに、幼少期に洗脳されたせいで現実に起こると勘違いしているんです。それは私ども漫画家にも責任があると思っています。だから私は、もっと現実的で幸せな結婚をする漫画を描きたいんですよね。 植草:バンバン描いてほしいですね。 東村:誰でも手に入るはずの幸せに、みんなこんなに苦労するのは悲しい状況だと思うんです。