『ゼイチョー』鷺沼が徴税禁止リストに関与した理由 やられっぱなしで終わらない饗庭たち
『ゼイチョー~「払えない」にはワケがある~』(日本テレビ系)第8話で取り上げられたのは、ヤングケアラー・若者ケアラーの問題だ。 【写真】クラブで踊る饗庭(菊池風磨)と百目鬼(山田杏奈) 住民税滞納者の若月(浦上晟周)は、高校生の頃両親を事故で亡くし、進学を諦めて清掃会社でバイトをしながら、祖父の介護を一人で引き受けるヤングケアラーだった。正社員になりたいと思っていたものの、介護があり時間の融通も利かず、なかなか条件に合う職場にも巡り合えない。 若月の疲労や困窮を見過ごせなかったのが、幼い頃から彼と顔見知りで近所に住む徴税吏員・鷺沼(猪塚健太)だった。彼の苦境を見兼ねて自分のポケットマネーを渡すようになる。しかし、そんな施しが続けられるわけもなく、若月の滞納分の住民税の徴税を停止する決裁を取るために、誇張した理由で稟議を上げる禁じ手に出てしまう。そのことを上司に気づかれ、代わりに「徴税禁止リスト」への関与を求められることになってしまったのだ。 「他にどうすれば彼を助けることができるのか俺にはわからなかった」「今目の前にいる人を助けたかった」とこぼす鷺沼だが、確かに「ヤングケアラー」の存在がようやく世間にも知られることになったのはここ数年のことだ。そうやって誰からも気付かれず、存在自体を無きものにされ、周囲に助けを求められない人は少なくないのだろう。結局、若月同様に彼のどうしようもない現実を知った行政側の鷺沼も周囲に助けを求められず、一人で何とかしようとしてしまったところがなんとも切ない。同じく徴税吏員の増野(松田元太)のように、若月にヤングケアラー・若者ケアラー向けの支援制度を案内し、必要な支援につなげることができれば……と悔やまれるが、その当時はもしかすると制度が間に合っていなかったかもしれないし、近い人間ゆえの私的な感情移入や急場を凌ぐために焦る気持ちなどがあり、なかなか冷静に判断できる状態になかったのだろう。 鷺沼役の猪塚は『ハレーションラブ』(テレビ朝日系)での交番に勤務する巡査・加賀孝之役の怪演が記憶に新しい。間違った正義に取り憑かれてしまうところは、本作での鷺沼と近しいところがあると言える。 鷺沼から「徴税禁止リスト」を託された饗庭(菊池風磨)と百目鬼(山田杏奈)は、そのデータを基に副市長・相楽(本郷奏多)に詰め寄るも、リストが本物かどうかわからないと突っぱねられてしまう。さらに饗庭らの動きに気づいた徴税第一係長・日比野(石田ひかり)は先回りし、あえてこのリストにも名前が挙がっており、若月が所属する清掃会社で相楽の父親(板尾創路)が代表を務める相楽グループ傘下企業に、絶妙なタイミングで税金滞納の疑いをかけて捜索を実施。リストの信憑性を無効化した。 しかし、やられっぱなしでは終わらないのが饗庭たちだ。徴税禁止リストへの関与を理由に辞表を提出した鷺沼に、上層部がリストの存在を認めていない以上、その退職理由も成立しないとする。そして、共に徴税禁止リストについて逃げ出さずに一緒に調べ闘うことこそが、本来的な“けじめのつけ方”だと諭した。父親の方ばかりを見て仕事する相楽の本心もやり甲斐もまだ見えてこないが、饗庭たちが市役所全体を敵に回していることだけは間違いなさそうだ。
佳香(かこ)