海外の修学旅行再開に二の足 福島県内中学・高校 コロナの次は円安、物価高… 国内などに変更 制約の中知恵絞る
歴史的な円安や長引く物価高が、海外への修学旅行を学びの特色としてきた福島県内の高校や中学校の訪問先に影響している。新型コロナウイルス禍で中断した渡航の再開を探るさなかに旅費が増大。国内や近隣国に変えたまま、元の姿に戻せずにいる。費用面の制約がある中、異文化交流や国際的視野を培う狙いを満たそうと各校は知恵を絞る。 「円安が長引くようだと米国行きは難しいかもしれない」。学法福島高(福島市)の菅野忠信教頭は悩ましさを口にする。同校は国際交流を目的に30年以上、米国を訪ねてきた。コロナ禍で旅自体を中断後、感染リスクを抑えるため北海道に変えて2022(令和4)年度に再開した。 旅費に充てる積立金は以前と同額を集めているものの、米国との往復航空運賃や燃油特別付加運賃(燃油サーチャージ)で積み立て分に達してしまうため、渡米は見合わせた。今年度は京都と大阪、奈良を巡る。菅野教頭は「生徒が多様な文化に触れ、知見を広める機会にしたい」と行程表に目を凝らした。
福島成蹊高(福島市)の特別進学コースはコロナ禍前の旅先だったカナダへの旅費が想定を5万~6万円超えるため、昨年度に続きマレーシアを選んだ。北米より日本に近いアジアでも比較的英語に触れられ、経済発展が著しい点に着目。物価高の中、積立金を追加徴収できないと判断したという。他の3コースもマレーシア、台湾、ベトナム・カンボジアを訪ねる。 中学生をオーストラリアに派遣していた矢祭町もコロナ禍を機に目的地を関西方面に変えた。今の経済情勢で豪州に戻した場合、費用は以前の倍以上に膨らむ見込みだ。異文化に触れる機会を国内で保つため、修学旅行とは別に天栄村の英語研修・宿泊施設「ブリティッシュヒルズ」での宿泊研修を取り入れている。 一方、中島村は昨年度に再開したマレーシアへの中学生の修学旅行を続ける。昨年比2万~3万円増の約30万円かかる見通しだが、旅費の大半を村予算で賄う。面川三雄教育長は「国際教育を深めることが一番」としている。
■海外修学旅行 費用高騰続く 日本修学旅行協会(東京都)は、円安下で海外への修学旅行の費用は今後も高騰が続くとみている。 協会によると、修学旅行では各校が独自日程を組む上、食事を付けるなど安全や健康に考慮した行程となる。日本で一般的な宿泊料などの団体割引も海外にはなく、個人旅行より割高になる傾向にあるという。 協会の担当者は「海外渡航を特色や魅力と考えて進学する生徒もいる」とした上で、「学校は旅行の目的や行き先を丁寧に生徒や保護者に説明しなければならない」と話す。