白星が遠い川崎。3試合連続で先制もなぜ勝てないのか
ゴールにつながる崩しは手応えも
[J1第16節]川崎 1-1 柏/5月25日/Uvanceとどろきスタジアム by Fujitsu 【動画】川崎のテクニカルな先制ゴール アウェーで連敗(鳥栖戦[●2-5]、G大阪戦[●1-3])を喫していた川崎は、3試合ぶりの勝利を目指してホームで柏と対戦。30分にはキャプテンのMF脇坂泰斗のゴールで先制するも、59分に柏FW木下康介にセットプレーからのこぼれ球を詰められ、3連敗こそ回避したが、勝点1を得るにとどまった。 鳥栖戦、G大阪戦に続き、3試合連続で先制点を奪っておきながらのドローだ。しかも、これでもかとボールをつなぎ称賛されたG大阪戦のゴール同様に、柏戦の得点も川崎らしさ満載だった。 右サイドから家長昭博が、相手ペナルティエリア内右に走ったバフェティンビ・ゴミスに浮き球を入れると、元フランス代表FWは、華麗なワンタッチのヒールで斜め後方の脇坂へ。脇坂はさらにエリア内で遠野大弥とのワンツーでDFを翻弄すると、遠野からのリターンパスを右足で蹴り込んだ。相手守備網を攻略する華麗なパスワークであった。 今季も例年通りに主力が抜けたなか、少しずつチームとして積み重ねを続けてきた川崎は、「自分たちにしかできないゴールにもっともっとこだわってやっていきたい」との鬼木達監督の想いを徐々に表現できるようになっていると言えるのだろう。 しかし、ここから以前のように畳みかけられないのが今の川崎でもある。ゴール後すぐにFKから同点に追いつかれたG大阪戦とは同じ轍を踏まなかったものの、前述したように後半にセットプレーから被弾。3試合連続の先制点を勝利に結びつけられなかった。 白星が遠い理由には90分のマネジメントがあるのだろう。鳥栖戦、G大阪戦も良い入りをしたものの逆転負け。そして柏戦も前半と打って変わって後半に主導権を握られた。前半と後半のパフォーマンスの差が今のチームの大きな課題であるのだ。 敵将の井原正巳監督も、柏として苦戦した前半に対し、川崎を押し込む時間を増やした後半についてはこう振り返る。 「(後半に向けては)相手コートに入った時にいかに自分たちがゲームをコントロールし、急ぎ過ぎずにやるか。そして相手の深い位置を取っていこうという話はしました。守備面で落ち着いたところもありますし、前半は少しサイドの守備のところでスライドが遅くなって押し込まれているシーンがあったのですが、そこが少し整理でき、押し込むことができたのかなと。 それとフロンターレさんはかなり飛ばして前からプレッシャーをかけてきて、中盤の選手も左右にスライドしながらプレッシャーをかけてきたので、そのへんが後半少し落ちたところで、ボールを握る時間が増えたのかなと思います。後半開始から選手がしっかりやってくれたと感じます」 一方で鬼木監督は後半の川崎のサッカーを次のように語る。 「自分たちの守備の圧力が少し下がってしまったところもあります。前半のところでかなり自分たちが飛ばしたというよりも相手からの背後へのボールや、カウンターなどへの対応で、後ろが疲弊した部分は当然あると思います。 ただ、どこでコンパクトにするかさえもっとしっかり共有できれば良かったと思います。我慢強くと言いますか、当然相手の時間もありますし、自分たちの時間もあります。相手の時間の時にそこで少し慌ててしまったりだとか、失点シーンの前もファウルが多かったりだとか、今日はかなり警戒していましたが、もったいないファウルで相手に時間がどんどん増えていくというのは実際にあったと思います」 前半同様であったが、後半はより4-3-3のアンカーを務める橘田健人にプレッシャーをかけられ、ビルドアップが落ち着かなかった面もあった。そこへの対応が必要だったと語るのはインサイドハーフとして先発した遠野だ。 「相手の(後半の)修正、ボランチの(橘田)健人のところにマンツーで付きにこられたところで、やっぱりボランチを上手く経由できなくなり、相手のペースになってしまったところはあったと思います。まずそこはひとつ相手が修正してきたところだと思います そこは声だったり、意思表示の部分で、前に一回当てて、その手前のところを動くというのは、僕も浮いていたところもあったので必要だったと思います。前半悪くなかった分、後半、相手が修正してきたうえで、どう自分たちが修正していくかをやっぱりピッチのなかで、よりしっかり考えてやっていかないといけないと感じました」 その点に関して、脇坂はチームとしてもっと前を向ける術を探すべきだったとしつつ、「(アンカーを)狙ってくるのは分かっていたからこそ、もっと準備をしていかなくてはいけなかった」とも口にする。 また遠野はこの日の反省をこうも話していた。 「メンタル的に1-0で勝っている部分がありましたが、2点目を取りに行く姿勢、そこが足りなかったなと思います。そこで押し込まれるシーンがあったので、やっぱり意志を合わせてピッチのなかで、やっていかなくては難しい試合になってしまうと感じます」 かつての川崎は相手を見ながら出方を変える柔軟性が光っていた。今季は最終ラインの顔ぶれが大幅に入れ替わるなど世代交代を進めるなかで、“相手を見る力”はより養っていかなくてはいけないということなのだろう。それが経験値、引いては試合巧者となる道と言えそうだ。 さらに、すぐにどうなるものではないが、以前から指摘されている技術力の向上も改めて図る必要性もある。 柏戦の後半、本来は模範となるべき立場ながら流れを止めてしまうパスミスがあった脇坂は「あれは自分のミス。技術的なミス。合わせていかなくてはいけなかった」と反省を口にする。初の主将の重責で心身ともに難しさを抱えているのは想像に難くないが、こうした一本のパス、ひとつのトラップにこだわってこその川崎である。 家長は敗れた鳥栖戦の後に「現実として良い試合もあるし、悪い試合もあるのが今のチームの現状だと思いますし、負けている試合と勝っている試合がこれだけあって、試合中の安定感がなく、良い時は良いけど悪い時は悪い。これが力だと思うし、簡単にはいかない。個々の力が足りないということに尽きると思います」と言及もしていた。 良い崩しはできるようになってきたが、まだまだ足りないことが多い。各自が意識を高めつつ、意見をぶつけ合い、相手の出方にも上手く対応できるようになっていかなければ安定した成績を残すことはできないのだろう。川崎の苦戦と挑戦は続いていきそうだ。 取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)