自衛隊「サイバー防衛隊」のお寒い現状、540人と桁違いの少なさ…ドワンゴのサイバー攻撃被害、いずれ的になるのは「国民の命」
サイバー攻撃については、もう一つ、人ごとではない件がある。日本保守党のサイトへの攻撃だ。幸いこちらは、わが党の優秀なWEBチームが闘って防いでくれているため、事故に至っていないが、衆院東京15区補選があった4月、「格段に攻撃が増えた」と報告を受けている。
「選挙になるとサイバー攻撃が増える」と聞いたことがあったが、今回のドワンゴへの攻撃が、その理由か否かは不明である。
ドワンゴの大損害も深刻だし、日本保守党へのサイバー攻撃も頭が痛いが、さらに深刻に捉えるべきは、わが国の行政機関や重要インフラ、防衛施設への攻撃である。これへの防御、対抗策はお寒い現状にある。
昨年3月、当時の岸信夫防衛相が辞任前の置き土産のように、自衛隊「サイバー防衛隊」を発足させた。その規模は540人態勢。もちろん0よりは良いが、他国とは桁違いの小規模だ。
540人のうち、サイバー攻撃に対処する隊員は450人だが、中国は約17万5000人のサイバー戦部隊の中に約3万人の攻撃専門部隊を持つ。北朝鮮でさえも約6800人のサイバー部隊を抱えているという。
岸田文雄首相が具体化の指示を出したと伝えられたが、大幅拡充の報はない。娯楽を司(つかさど)る民間企業のサービス停止では済まない事態に備えないままでは、いずれ的になるのは「国民の命」である。
有本香(ありもと・かおり) ジャーナリスト。1962年、奈良市生まれ。東京外国語大学卒業。旅行雑誌の編集長や企業広報を経て独立。国際関係や、日本の政治をテーマに取材・執筆活動を行う。著書・共著に『中国の「日本買収」計画』(ワック)、『「小池劇場」の真実』(幻冬舎文庫)、『「日本国紀」の副読本 学校が教えない日本史』『「日本国紀」の天皇論』(ともに産経新聞出版)など多数。