「旧NISA」2020年投資分に注意!ほったらかしにしておくと損になることも
2024年1月に満を持してスタートした「新NISA(少額投資非課税制度)」。かつてないお得な投資制度であることから、口座を開設したり、積立設定をするなど準備を進めていた人も多いだろう。 その一方で、2023年まで旧制度でNISAを利用していた人は、そのまま放置しておくのはNGだ。特に2020年に一般NISAで取引をしていた場合、今年中に売却しておかないと損をしてしまうケースもあるという。 ●旧制度のつみたてNISAは20年、一般NISAは5年非課税で運用が続けられるが・・・ 旧制度のNISAの非課税投資額は、新NISAの生涯非課税限度額とは別枠となる。旧制度で投資できたのは2023年までで、その後つみたてNISAは20年、一般NISAは5年非課税で運用し続けることができる。 ポイントは<非課税期間が終了したときの対応>だ。 旧制度の一般NISAはこれまで、非課税期間終了前に「新たな非課税枠にロールオーバーする」「課税口座に振り替える」「売却する」の3つが選べたが、今後はロールオーバーが使えず、投資から必ず5年で非課税の運用を終える。 一方、旧制度のつみたてNISAにはロールオーバーのしくみはなく、非課税期間は20年と決まっている。つまり、一般NISAもつみたてNISAも、非課税の運用を終えたあとは、「年内に売却する」「時価で課税口座に振り替える」のどちらかを選ぶ必要がある。 2020年に一般NISAで投資した人は、非課税期間は2024年までのため、今年中に上記のいずれかを選択しなければならないが、どのようなことに注意すればいいのだろうか。三宅伸税理士税理士に聞いた。 ●課税口座への移管する旧NISAの投資分は「年末時点の時価が取得価格」となる 2020年に一般NISAで購入した商品は、2024年に非課税期間が終了します。2020年に一般NISAで購入した商品には、以下の2つの選択肢があります。 選択肢1:2024年中に売却する 2024年中に一般NISAで保有している商品を売却すれば、その売却益には税金がかかりません。 選択肢2:保有し続ける(2024年最終営業日の時価で課税口座に移管) もし2024年中に売却しなければ、保有商品は課税口座に移管されます。この場合も、非課税期間中に生じた配当などの利益には課税されず、2025年以降に売却する際には、2024年最終営業日の時価を取得価格として計算します。 ●含み損があり今後も値下がりしそうなら売却の検討を 新制度のNISAでは、年間に投資できる金額が増えました。成長枠が240万円、積立枠が120万円で、生涯の上限額は1800万円です。これは旧制度のNISA(一般NISAは600万円)よりも大幅に増額されたことを意味します。また新制度のNISAの生涯上限額は、売却をした翌年に、取得価格分が復活します。 そのため、新制度NISAの上限枠を超えない投資を考えているのであれば、2024年中に一般NISAで購入した商品を売却し、その資金を新制度NISAで再び運用することを検討しましょう。損失が出ていても、同じです。 もし新制度NISAの上限額を超えるような大きな投資を検討している場合、以下のポイントを考慮してください。 ポイント1:含み益があり2025年以降の価値が上がる見込みがある場合 2024年の最終営業日に含み益があり、さらに2025年以降に価値が上昇する見込みがある場合は、売却せずに課税口座に移管することで、手数料などの費用を軽減することができます(以後配当等には課税される)。その後の売却時には、移管時の時価が取得価格として計算されます。 例) 2020年に100万円で投資し、2024年最終営業日の時価が120万円 2025年に120万円から140万円に値上がりして売却 →値上がり益20万円に対して20.315%課税 ポイント2:含み損があり今後の価値上昇が見込まれない場合 さらなる損失を避けるために、売却を検討するタイミングです。 NISA制度は利益が出た場合には税金がかからない魅力的な制度ですが、投資にはリスクが付きものです。商品の選択や売却タイミングを慎重に考え、自分の投資目標やリスク許容度、税務アドバイスを考慮して最適な戦略を選びましょう。最終的な決定は、自分の状況に合わせて行いましょう。 【取材協力税理士】 三宅伸(みやけ・しん)税理士 大阪府立大学経済学部卒業後大手リース会社勤務。クラウド会計の導入をすすめ、インボイス制度や電帳法にも対応できるストレスフリーな事務環境を提供。常にお客様の立場に立って考え共に成長していくことをモットーに法人及び個人の会計税務、起業支援、相続等と幅広く活動している。また、無申告や税務調査のサポート対応も行っている。 事務所名 :三宅伸税理士事務所 事務所URL:https://miyake-tax.jp/
弁護士ドットコムニュース編集部