飲食業倒産1-10月で727件、年間最多を更新の勢い 物価高、人手不足、ゼロゼロ融資の返済が大きな負担に
2023年(1-10月)「飲食業の倒産動向」調査
飲食業の倒産が高水準をたどっている。2023年は年間で過去最多を更新する可能性も出てきた。2023年(1-10月)の飲食業倒産(負債1,000万円以上)は727件(前年同期比76.0%増)で、前年同期の1.7倍に急増し、すでに8月で前年の年間(1-12月)件数の522件を上回った。人手不足やコロナ禍で過去最多の842件を記録した2020年を抜く勢いだ。 業種別では、「食堂,レストラン」、中華料理店やラーメン店、焼肉店などの「専門料理店」、 「酒場,ビヤホール(居酒屋)」など8業種で、すでに2022年の年間倒産を上回った。 特に、コロナ禍で新規参入が相次ぎ激しい競合に晒された「持ち帰り飲食サービス業」は10月で2022年(1-12月)の2.3倍の46件、「宅配飲食サービス業」も同1.7倍の58件と急増している。 東京商工リサーチ(TSR)が10月に実施したアンケート調査で、コロナ禍の「ゼロゼロ融資」を利用した「飲食店」は54.1%と半数を超えた。飲食業の「ゼロゼロ融資」を受けた後の倒産も前年同期(44件)の約2倍の90件発生している。コロナ禍で窮状に陥った飲食店の資金繰りを支えた支援策が終了し返済が始まると、業績回復が遅れた飲食店には経営への負担になる。 コロナ禍が収束しても、食材・光熱費の上昇や人手不足、人件費の高騰など、飲食業の置かれた環境は厳しいままだ。2023年の飲食業倒産は、10月時点ですでにコロナ禍前の年間倒産700件台の水準に達している。 これから飲食業者にとっては書き入れ時の年末を迎えるが、TSR実施のアンケートでは、2023年の忘・新年会の実施予定は54.4%と5割台にとどまる。改善の好材料に乏しいなか、年末まで現在の状況が続くと、2023年の飲食業倒産は800件台後半に乗せ、過去最多を更新することが現実味を帯びてきた。 ※本調査は、日本産業分類の「飲食業」(「食堂,レストラン」「専門料理店」「そば・うどん店」「すし店」「酒場,ビヤホール」「バー,キャバレー,ナイトクラブ」「喫茶店」「その他の飲食店」「持ち帰り飲食サービス業」「宅配飲食サービス業」)の2023年(1-10月)の倒産を集計、分析した。