【コラム】「馬雲が帰ってきた」
ぴったり3分だった。8日に開かれたアリババ傘下の金融会社アントグループ設立20周年行事に参加した馬雲(ジャック・マー)氏の演説時間だ。メッセージもやはり簡潔だった。「この20年インターネットで食べてきたとすれば、これからの20年は人工知能(AI)に収益源を見いださなければならない」。彼は3分間のスピーチをすべてAIで満たして壇上から降りた。中国のIT業界は「馬雲が帰ってきた」として歓呼した。彼の経営復帰を既定事実化する雰囲気だ。 馬雲氏が大陸から消えなければならなかったのは2020年11月だった。「中国には金融システムというものが最初から存在していない。なのに何のシステム危機だというのか」。当時この一言が党指導部の逆鱗に触れ、心血を注いだアントグループの上場は水の泡となった。4年余りの間、日本、シンガポール、ニューヨークなど海外を飛び回らなければならなかった。 馬雲氏のいないアリババは萎縮した。業績は足踏みで、コストを減らして純益を生み出さなければならなかった。多くの社員が解雇され青年失業の隊列に合流した。投資は途絶え、子会社は相次いで廃業した。躍動性を失ったIT業界の現況をそのまま見せる。こうした状況で馬雲氏が公式行事に登場したため興奮するのは当然に思える。業界専門家らは彼がアリババにどのような変化をもたらすか注視している。 大きな流れに変化が感知される。中国全人代は今週、民営経済促進法を制定する。民営企業に公平な競争環境を提供するというのが骨子だ。資金調達の不利益をなくし、政府調達市場も開いた。理由は明らかだ。民営企業は都市労働者の80%を吸収する成長エンジンだ。民営部門の活力なくして経済危機の打開は難しい。共同富裕を名目にした民営企業の足かせを解かなくては経済躍動性を回復させることはできない。これまで言葉ばかりあふれた。しかし今回は言葉だけでなく法で支援の意志を明らかにした点で意味ある変化と受け止められる。 人民日報は最近、中国のIT業界を代表するまた別の人物であるテンセントの馬化騰(ポニー・マー)会長の寄稿を載せた。彼は「党と政府の指導があるため民営企業の見通しは明るい」と書いた。政府の融和ジェスチャーに民間が呼応する姿だ。中国はこのように民営企業家を経済の前面に押し出している。 20年前に中国のインターネット革命を主導した馬雲氏はいまAIの旗印を掲げて再び舞台に上がるところだ。馬雲氏に象徴される民営企業は果たして経済に新たな躍動性を吹き込むことができるだろうか。2025年のまた別の中国観戦ポイントだ。 ハン・ウドク/チャイナラボ選任記者