首里染織館suikara:琉球びんがたと首里織の伝統を未来につなぐ挑戦
沖縄県那覇市の首里地区に位置する「首里染織館suikara」は、琉球びんがたと首里織という2つの伝統工芸を次世代へと継承するための施設となっている。この施設では、職人たちが技術を磨き、訪れる人々はその工芸の美しさと伝統の重みを体感することができる。今回は、首里染織館suikaraに、施設の役割や未来への展望について伺った。
沖縄の伝統工芸の新たな拠点
ーまず、この施設について簡単に教えてください。 首里染織館suikaraは、琉球びんがたと首里織という2つの伝統工芸を次世代に継承するための拠点として設立されました。1階には展示ギャラリーやショップ、2階には琉球びんがた事業協同組合、3階には那覇伝統織物事業協同組合が入っています。それぞれの階には工房も併設されており、職人たちが日々技術を磨きながら制作を行っています。また、一般のお客様も自由に見学ができ、染めや織りの体験ができるのが特徴です。 2019年に首里城が火災に見舞われ、その影響で首里の観光事業が大きく打撃を受けました。そのような状況の中で、首里当蔵の地に伝統工芸の技術を次の世代に継承するための施設として、首里染織館suikaraが建てられました。これにより、長年拠点を持たなかった組合が、安定して活動できる場を得ることができました。
琉球びんがたと首里織の魅力
ー琉球びんがたと首里織の歴史的背景について教えていただけますか? 沖縄は「工芸の島」として知られており、国の伝統的工芸品に指定されている16品目のうち、13品目が染めや織りに関係しています。14世紀以降、東南アジアや中国、日本との交易を通じてさまざまな技術が取り入れられ、それが沖縄の気候風土に適したものへと変化し、発展してきました。各地に特徴的な織りの技法が受け継がれていますが、特に首里では、王族や貴族のために格調高く美しい織物が織り続けられてきました。
首里織は、色や柄ともに非常に華やかでありながら、落ち着いた品格を持ち合わせています。首里織の名称は、1983年に国の伝統的工芸品に指定された際に、首里に伝わるさまざまな織りの技法を総称するものとして採用されました。首里織の制作には絹や綿、麻が使われ、染料には琉球藍やフクギなどの植物染料が主に使用されていますが、近年では化学染料も取り入れられています。帯や着尺などの和装用の反物だけでなく、職人の自由な発想から生まれる小物やインテリアも制作されています。