名古屋限定と気づいていない!「海老おろし」は隠れ名古屋めし~大竹敏之のシン・名古屋めし
名古屋のうどん店では定番 夏の風物詩的メニュー
名古屋人にとっては当たり前なのに実は他の地域にはない。「名古屋めし」「ご当地グルメ」なんて言葉がなかった時代には、多くの名古屋めしもそんな存在だったと思われます。東京で喫茶店に入ったらコーヒーにピーナッツが付いてこず、「何で?」と首をかしげたというのは、名古屋の常識が他地域の非常識であることを表す典型的な"名古屋めし"あるあるです。 現在では、主要な名古屋めしは広く全国に知られ、地元の人もそれが地域固有の食べ物だと認識をしています。しかし、まだまだ気づかれていない"隠れ名古屋めし"は残されています。そのひとつが海老おろしです。 海老おろしとは、一尾を丸ごと揚げた大きな海老天と大根おろしを盛った冷たいうどん(またはきしめん)。つゆはちょっと甘めのそば用が主に使われます。夏限定で出す店が多く、中華料理店の冷やし中華同様に、うどん店が「海老おろし はじめました」と貼り出すのは名古屋ではしばしば見かける風景です。
お客のリクエストとまかないをかけ合わせて商品化
この海老おろしが名古屋以外ではほとんど見かけないことは、あまり知られていないのではないでしょうか。実はこのメニュー、昭和40年代に名古屋のうどん店が考案し、名古屋周辺で限定的に広まったのです。 生みの親は「えびすや大治店」(愛知県海部郡大治町)の初代、橋爪淳さん。名古屋市中区にある総本家えびすや本店で修業し、昭和43年に名古屋市瑞穂区で独立。手打ち麺のおいしさをより感じてもらいやすいようにとざるきしめんを看板メニューにすえました。揚げたて天ぷらも人気で、ある時、ざるきしめんを注文したお客が「天ぷらをのせてくれ」とリクエスト。さらにまなかいでよく食べていたおろしうどんとかけ合わせることを思いつき、海老おろしうどんが誕生したのでした。
のれん分け店が開発し、本店、チェーンが広めた
これを広めたのが繁華街の錦三丁目="きんさん"にある本店。「これはいいメニューだ」と採用すると、水商売の人たちにウケて大ヒットしたのだそう。さらにサガミチェーンが初の郊外大型店の出店にあわせてメニュー化すると、やはり大人気商品になり、やがて名古屋市内のうどん店もこぞって取り入れたのでした。 海老おろしは、うどん好き&海老好きの名古屋人の嗜好にあったからこそ受け入れられたことは間違いありません。しかし、味つけに強い地域的特徴がなく、またうどん店は情報発信にあまり積極的とはいえないため、名古屋とその周辺エリアにだけ広まったのではなかったでしょうか。 まだまだ残暑が厳しいこの季節。冷たくて食べやすく、なおかつ栄養価も高い海老おろしは夏バテ防止にもうってつけ。つるつるもりもり食べて、酷暑の名古屋を乗り切りましょう! ※記事内容は配信時点の情報です #名古屋めしデララバ
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