『GOOD』‐善き人‐主演の佐藤隆太「良き選択とは?良き夫、良き妻、良き友とは?」
『GOOD』‐善き人‐はC・Pテイラーによる戯曲。イギリスではドミニク・クック演出でリバイバル上演、オリヴィエ賞4部門にノミネートされた話題作だ。舞台は1930年代、ヒトラーが台頭し始めたドイツ。善良で知的、平凡な男であるジョン・ハルダー教授は過去の論文をヒトラーに気に入られたことで、人生が思わぬほうへと向かっていく…。今回の上演でハルダーを務めるのは、デビューしてから今年で25年目を迎えた佐藤隆太。佐藤が今作への意気込みを語った。 【全ての写真】佐藤隆太の撮り下ろしカット ――オファーを受けた時の心境は? お返事するまでしばらく悩みました。戯曲を読んで、自分が演じている姿をなかなか想像できなかったんです。本当に自分にできるのかな?と。もちろん、チャレンジングな作品に呼んでいただけて嬉しかったです。でも作品に対する理解や想像が及んでいない人間がやらせてくださいと言っていいのかどうか。すると、演出の長塚圭史さんがお手紙をくださったんです。一人芝居『エブリ・ブリリアント・シング』初演で僕がお客さんとやり取りしている姿を見て、感じてくださったものがあったようでした。そして、長塚さんの「常にひらかれたチーム作りを心がけている」という言葉が心に沁みました。作品に携わる全スタッフがときに垣根を越えて劇中に生き、貢献できるように紡いでいきたい、と。ぜひそのカンパニーに参加して、皆さんと一緒に丁寧にモノづくりをしていきたいと思い、参加を決めました。 ――ジョン・ハルダー教授の印象を教えてください。 周りから「あの人、いい人だよね」と言われるような、でも特別に善良というよりは、普通の人かなと。共感できるところは多いです。過酷な環境に身を置くことになったとき、何を一番大切に考え、誰を守り、自分にとっての正義を貫くことができるのか。シリアスな話の中にユーモアもあり、人間のおかしさが見え隠れするのが面白くて。また音楽があることでお客さまに届きやすくなるとも思います。 ――自分では善き人であろうとして、予想外の展開になってしまうハルダーの生き様をどう思いますか。 理想では大きな波に抗おうとしていても、いざそこに身を置くとなかなかできないですよね。他人ごととは思えないし、責めることはできない。『GOOD』は全てにかかってくると思うんです。良き選択とは?良き夫、良き妻、良き友とは? 僕は自分のやりたいことよりも、家族や友人が何をしたいかが気になるんです。自分が大好きなことを日々の仕事にできている、その大前提があるからかもしれないけれど。ときには人の言うことを気にしすぎて、ぶれる瞬間もあったりする。ハルダーに近いところはありますね。 ――今年、俳優生活25年。俳優として変化したところは? 自分では全然変わっていない気がします。不器用だからか、本当にちょっとずつしか前進できないんだなって。やればやるほど難しいのがこの仕事。若い頃の思い切りの良さ、知らない強みっていいな、なんて思ったりもしますね(笑) 25年前、僕のデビュー作は宮本亞門さん演出でウルフルズが音楽を手がけた『ボーイズタイム』。当時の僕は本当に勢いだけで突っ走っていましたから(笑)。あの時の自分に教えてあげたいですよ。いずれ、こんな舞台に立つことになるんだよって。 最近では舞台に対する欲が強くなってきました。コロナ禍を経て、特に。一人芝居をやることで人と繋がれることの喜びと幸せをダイレクトに感じたんです。劇場に集まった人だけが味わえる時間は贅沢でとても豊か。これからも積極的に取り組みたいです。 ――メッセージをお願いします。 自分ならどうする?と想像したくなる作品。音楽もありますし、難しく考えず楽しんで頂ければと思います。劇場でお会いできることを楽しみにしています! 取材・文:三浦真紀 撮影:源賀津己 <東京公演> 『GOOD』-善き人- 公演日程:2024年4月6日(土)~ 4月21日(日) 会場:世田谷パブリックシアター