持ち家か賃貸か、堀江貴文が「圧倒的に賃貸」と断言する「納得の理由」
何を信じ、何を疑うべきか? 無知は搾取される現代社会で、何をすれば得で、損なのか――。ホリエモンこと、堀江貴文氏が解説した『ニッポン社会のほんとの正体 投資とお金と未来』(徳間書店)から一部抜粋して紹介する。 【マンガ】「持ち家か賃貸か」論争…ついに「正解」がわかった!
マイホームを買っていいのは?
住むなら賃貸か、持ち家か。ずーっと繰り返されているテーマだ。でも答えは明らかだ。単純な損得で考えれば賃貸だ。もう圧倒的に賃貸である。そして損得抜きなら持ち家もあり。以上が答えである。 日本では昭和時代につくられたマイホーム信仰がいまだに根強い。そしてその信仰に乗っかって家を売りたがる不動産業者がいる。賃貸派は賃貸派としてのロジックがあり、持ち家派は持ち家派としての言い分がある。ようするに永遠にかみ合うことはない。かくして、賃貸vs持ち家論争はえんえんと続いていく。 どうしても持ち家が欲しい。マイホームで幸せな家庭を築くのが夢だ。そういう人は迷わずさっさとローンを組んで買ってしまおう。もちろん高い買い物になる。人生最大の買い物だろう。でもそれで夢がかなうなら安いものだ。できるだけ早く買い、できるだけ長くそこで暮らすのがベストである。人生の時間は限られている。 ただ、不動産業者のセールストークには要注意だ。あたりまえだが彼らは家を売るプロである。不都合なことは口が裂けても言わない。話半分で聞き流し、あくまで自分の人生観、価値観にしたがい、自分に合う物件を選ぶべきだ。 かたや、持ち家の実利的な価値はゼロに等しい。むしろデメリットだらけだ。だから特別な思い入れがないなら買わないほうがいい。絶対買ってはいけない。 一般庶民がマイホームを買う場合、だいたい30~35年ローンを組むことになる。35年ものあいだ毎月毎月、借金を返済し続けるわけだ。雨が降ろうが槍が降ろうが待ったなし。くわえて固定資産税やメンテナンス費用といったランニングコストもかかる。 なかなかのプレッシャーである。なにがなんでもいまの収入を死守しなければならな い。となると、そのさきの人生の選択肢は一気に狭まる。 たとえば魅力的な転職先があってもためらうだろう。その職場の雰囲気になじめなかったら? 試用期間中にクビになったら? いちいち不安を膨らませてしまう。転職してキャリアアップを遂げる。それが会社員として年収を大幅に増やす王道コースだ。でも大きなローンがその挑戦をさまたげる。つい現状維持に走ってしまう。いまの職場にしがみつき、やりたくない仕事を押しつけられてもひたすら我慢だ。 仕事にかぎったことではない。持ち家だと暮らし自体の自由度も狭まる。治安が悪くなろうが、隣近所とトラブルが起きようが引っ越せない。これまた我慢だ。いざとなれば売却や賃貸に出せばいい? あまい。交通アクセスの良い一等地ならともかく、庶民が買える程度の物件に大した魅力はない。買い手を見つけるのは大変だ。 それに引き換え、賃貸暮らしはコスパがいい。いつでも好きなときに引っ越せる。固定資産税とも無縁。そしてなによりメンテナンスや修繕にかかる費用は家主が払ってくれる。入居者は自腹を切ることなくつねに快適な生活空間を確保できるわけだ(しかも2020年の民法改正により、賃貸事業者の修繕義務はいっそう厳格化された。 そんな賃貸に比べると、持ち家暮らしの息苦しさは如何ともしがたいものがある。「でも賃貸だと家賃をただ払い続けるだけで終わる。持ち家ならローンを払い終えたあと資産として残る」不動産業者の常套句である。騙されてはいけない。 新築を買った場合、住んだ瞬間からその家の価値は下がっていく。中古物件のあつかいになるからだ。ローンを払い終えた35年後の古びた家ともなればなおさらだ。資産価値はほぼゼロだ。もちろん戸建てなら土地の価値は残る。でも庶民が買えるような土地にたいした価値はない。一等地でないかぎり地価は上がらない。 持ち家に実利的なメリットは皆無だ。ローンを完済しても固定資産税はずっと発生する。建物の老朽化が進めば、フルリノベーション並みの改修工事が必要になる。その際の費用は少なくとも1000万円はくだらないだろう。 「高齢者になったら部屋を貸してもらえなくなる。だからいまのうちに家を買っておいたほうがいい」これも不動産業者の常套句。不安につけこむ狙いだ。詭弁である。 もうじき、高齢者だろうが部屋はいくらでも借りられるようになる。いま日本は人口減少にともなう空き家問題が深刻になっている。くわえて超高齢化社会だ。であれば今後、シニア向けの賃貸物件は必然的に拡充されていく。心配は無用だ。 賃貸か、持ち家か。繰り返すが、買っていいのはマイホーム自体に損得を超えた特別な思いがある人だけだ。マイホームは本質的に不条理な買い物である。損する覚悟のない人は買ってはいけない。