横浜とロッテに生じた動員の怪現象的格差
千葉ロッテに創る異次元空間
では、一方の千葉ロッテはどうか。 伊東新監督の元、目立った補強がなかったというのに、育成出身の西野や鈴木ら若い選手を掘り起こして“全員野球”で楽天に食らいついている。井口の日米通算2000本安打の達成などもあって話題を提供しているのだが、それらが観客動員につながっていない。 ロッテこそ、これまで革新的なファンサービスを続けて観客動員を増やしてきたチームだ。夏場の全試合花火や、高額チケットやビール半額デー、試合後のグランド解放など様々なイベントを実行してきた。 ハード面の顧客満足度を高めるために球場の改修も段階的に進めてきた。球場外のスペースを利用してライブ形式のファンサービスを行うなどもしてきている。そのスタイルは楽天が模倣しているほどだ。だが、球場改修もストップ、ネックとなっている球場へのアクセスの悪さも、決定的な打開策がない状態が続いている。またプロ野球界の先陣を切ってきた数々の画期的なファンサービスにも“マンネリ”という声が聞かれ始めているという。「今年は原点に立ち返り駅前のビラ配りなどを再開しました。また、球場近隣住民へのビラ配り、アプローチも再度、徹底して行っています」と球団関係者。 それでもなかなか観客動員には、跳ね返って来ない。 フロントの一部は「観客動員が増えた05年は、31年ぶりの優勝へという明確なストーリーがあったが、現在は話題を含め魅力のあるストーリーをなかなか見つけられないでいる。いかにファンに感情移入をしてもらえるかが大事なのですが、ロマンに溢れるストーリーを提供できていない事も要因の一つ」と分析しているが、震災以降、“千葉ロッテ地方”の景気は冷え込んだままでアベノミクス効果も現れていない。 しかし千葉ロッテの営業サイドも手をこまねいているわけではない。この13日からの楽天、オリックスの6連戦、20日からの西武3連戦で「マリーンズ・ベースボールトラベラー」と銘打った全方位3Dプロジェクションマッピングという映像技術を使った新しいファンサービスイベントが開催される。東京駅がリニューアルした時に観客が殺到して中止となったことで有名になったファンタスティックな3D映像をグラウンドに投影するもの。「タイムスリップ」「野球」をテーマにした幻想的なSF映像&LIVE劇が、試合後、約10分間に渡って実施される。ファンも一体となって楽しめるイベントで、鑑賞位置によって違う映像が楽しめる仕掛けになっている(仮想写真を参考)。また試合中には、球場の外壁にまた違った3D映像が投射されるという。 懸命の努力を続けているロッテの営業サイドからすれば、「勝っているのに客が減る」という、この現象は“真夏の怪”では済まされないかもしれない。もしスポーツビジネスの法則に狂いがなければ、千葉ロッテが、首位を独走する楽天を猛追すれば、間違いなく観客動員は増えていくはずなのだが……。明日からは、その重要な直接対決である。 (文責・本郷陽一/論スポ)