情報BOX:EUが中国製EVに暫定関税発動、最終決定期限は11月2日
Philip Blenkinsop [ブリュッセル 4日 ロイター] - 欧州連合(EU)規制当局は、中国製電気自動車(EV)に対して5日から17.4%─37.6%の暫定関税を課すと明らかにした。 これらの関税は自動車輸入に対する標準的な10%関税に上乗せされる。 関税のポイントや今後の注目点について以下にまとめた。 <暫定とは?> 暫定関税は、欧州委員会がEU域内産業への被害を防止する必要があると判断した場合に反補助金調査開始から9カ月以内に発動できる。 最長で4カ月間適用され、それまでに欧州委は最終的な関税を適用するかどうかを決定する。今回の中国製EVの場合、期限は11月2日となる。 暫定関税は調査が終了した時点で最終関税が課される場合にのみ徴収される。最終関税の方が低い、もしくは適用されない場合、暫定関税はそれに応じて減額調整される。それまでは通常、税関当局が輸入業者に銀行保証を要求するにとどまる。 <今後は?> 欧州委は中国当局と実務レベル協議を行っており、不当な補助金に効果的に対処する必要があるとしている。 EU官報の暫定関税公告を受け、中国やEV製造業者などの利害関係者は7月18日までに意見を述べることが可能。また、公聴会の開催も要求できる。 最終報告書は一般的に暫定調査結果を確認するもので、寄せられた意見に従って調整される可能性もある。一部の意見が受け入れられ、最終的な税率が暫定税率よりも若干低くなることも多い。 中国から欧州へのEV輸出最大手である米テスラは欧州委に対し、自社への関税率を個別に算出するよう求めている。 同社は調査に協力したと見なされ20.8%の税率を課されたが、より低い税率を望むだろう。 関税に代わる措置として、輸出業者は製品を最低価格以上で販売することを約束することができる。中国の輸出業者は10年前、太陽光パネルを巡ってそうした措置を取ることで合意した経緯がある。ただ、自動車はコモディティーではないため、最低価格が適用されるとは考えにくい。 <誰が決定?> 暫定段階では欧州委が関税を課す全権限を有するが、EU加盟国に諮り、各国の意見を考慮することになっている。各国は7月15日までに自国の意見を提出する。 EU加盟国は中国製EVへの追加関税を支持するかどうかで逡巡している。 欧州委は調査終了後、通常5年間適用される最終関税を提案できる。 EU加盟27カ国の「特定多数決(qualified majority)」で反対されれば、その提案は阻止される可能性がある。特定多数決とはEU人口の65%を代表する15加盟国を意味する。 <調査後は?> 比亜迪(BYD)、吉利汽車、上海汽車のサンプルグループに含まれない企業で、独自の個別関税率を望む企業は最終関税発動直後に「加速審査」を求めることができる。このような見直し期間は最長9カ月となる。 欧州委は、措置が必要でなくなった場合や補助金対策として不十分な場合、1年経過後に「中間レビュー」を行うこともできる。また、関税逃れも調査する。 企業は関税措置に対して欧州司法裁判所に異議申し立てが可能。また、中国はEUを世界貿易機関(WTO)に提訴できる。どちらの法的手段も1年以上はかかる。