まもなく侵攻から2年 “戦地のワイン”の輸入を手がけたウクライナ人女性の奮闘【WBS】
戦争で出荷が大幅に遅延
2023年7月、大阪。グリッパさんがスーツケースを大切そうに引きながらやってきました。 「客を集めて試飲会。ウクライナのスパークリングワインを紹介したい」(グリッパさん) 飲食店のソムリエなどに向けた試飲会では、ワインのプロたちからの評判も上々でした。グリッパさんも「(ワインを)ぜひ売りたい。ウクライナのスパークリングワインは珍しいから人気になる」と手応えを感じ、2023年10月の販売を目指すことになりました。 しかし、戦争でウクライナ国内の港が使えないため、隣国ルーマニアの港を使うことにしましたが、港町オデーサへの攻撃が頻発して、通関が混乱。最大1カ月の待ち時間が発生し、ワインの日本への到着がどんどん遅れました。 2023年9月、それでも事業を進めようとグリッパさんはウクライナへ。やってきたのはアートワイナリーのキーウのオフィスです。ラベルデザインの承認をもらい、混乱の中でもできることに力を注ぎました。 そして、ついに12月、通常の倍以上の時間である出荷から3カ月をかけ、ウクライナ産スパークリングワインが日本に到着したのです。 さらに、販売を祝い在日本ウクライナ大使館で試飲会を開催することができました。地道な営業活動も実り、イオンのほか、全国にレストランを展開するグローバルダイニングなどでの取り扱いも決まりました。 「ウクライナは戦争中で、ウクライナ産が手に入るか疑問に思われるだろうが、ウクライナ女性の協力のおかげでこれだけのワインが届けられる」(ウクライナのコルスンスキー駐日大使)
そして1月31日。最後の検品のため再び倉庫に来たグリッパさん。ここまでの苦労を思い出し「いろいろな苦しみがあった。日本でビジネスを始めるとわからないことばかり。それでも日本にいてウクライナのため何かをやりたいという気持ちが強かった」と振り返ります。 そして戦争が続くウクライナのワインを飲んで、日本の人に、戦争がない目の前の幸せをかみしめてほしいと思いを乗せます。 「戦争が始まってから人の人生はきょうしかないかもしれないと感じる。だから皆さん、きょうを楽しんでほしい。スパークリングワインを飲みながら、人生を毎日楽しんでほしい」(グリッパさん) ※ワールドビジネスサテライト