<高校野球>「見えない敵に負けた」「聖地は遠いな」 悔しさにじませ再スタート誓う センバツ中止
8強入りした2018年以来のセンバツとなるはずだった創成館(長崎)の稙田(わさだ)龍生監督(56)は「見えない敵に負けた。誰が悪いわけでもない」と無念さをにじませた。新型コロナウイルス感染防止のため、他校との練習試合を紅白戦に切り替えるなどしてきた中での発表に「2年生が甲子園に行くチャンスはあと1回しかない。今はゆっくり休んで夏に向けてスタートしたい」と絞り出した。 【写真特集】センバツ中止決定に涙を見せる球児たち 稙田監督から知らせを受けると涙を流す選手たちも。上原祐士主将(2年)は「中止は考えていなかった。ずっと目標にしてきた場所だったので悔しい。夏に向け気持ちを切り替えるだけ」と声を震わせた。 「聖地は遠いなと改めて感じた」。鹿児島城西の佐々木誠監督(54)は悔しさをにじませた。センバツの舞台で1954年の創部から春夏通じて初めて甲子園の土を踏むはずだった。開催を危ぶむ声が高まり動揺を隠せない選手たちに「結果がどうなろうと準備はしておこう」と説いてきた。佐々木監督は「もう終わったことなので選手には『これに左右されず夏に向けてしっかり練習していこう』と伝える」と話した。 4強だった前回大会を超える成績を目指していた明豊(大分)の川崎絢平監督(38)は「仕方ないという思いと、無念という思いの両方がある。選手に何と伝えたらいいのか。正直分からない。相当なショックだと思う」とうつむいた。岩武茂代校長は「せめて選手たちが元気に野球できるようサポートしたい」と述べた。 23年ぶりのセンバツ切符を手にしていた大分商。主将の川瀬堅斗投手(2年)の父保生(やすお)さんによると、中止を知った川瀬投手は「何でだ!」と悲鳴のような叫び声を上げたという。 幼児向け野球体験会などの取り組みが認められ、21世紀枠で春夏通じて初の甲子園切符をつかんだ平田(島根)。植田悟監督(48)が練習を切り上げるよう指示し、選手らを整列させて大会中止を伝えた。硬い表情で見つめる選手らに、植田監督が「夏は県大会で優勝して必ず甲子園の土を踏もう」と声を掛けると「はい」と大声が飛んだ。 取材に坂田大輝外野手(2年)は「(野球体験会で教えた)子どもたちにかっこいい姿を見せたかったので悔しい」と唇をかみしめた。【中山敦貴、林壮一郎、河慧琳、鈴木周】