本棚背負って3~4時間売り歩く…ゲームの小説で本の魅力にはまり、脱サラして書店開く
熊谷堂書店の増山さん
24日までは「秋の読書推進月間」。埼玉県熊谷市広瀬の「熊谷(くまがい)堂書店」は、店主の増山岳志さん(46)が本棚を背負う「行商スタイル」でも販売する、ちょっと変わった書店だ。本がぎっしり詰まった本棚は重さ約20キロ。「人と本の接点を増やしたい」という思いで営業を続ける。(徳原真人)
大手書店チェーン勤務の経験や図書館司書の資格を持つ増山さんが自身の書店を開いたのは2018年4月。X(旧ツイッター)に新聞の書籍広告の投稿を続けていたところ、次第に「いいね」が付くようになり、「本に興味を持つ人は意外と多い」と気付いたことがきっかけとなった。
実家の運送業で使っていた事務所を改装した書店は、熊谷駅から車で10分ほどの場所にある。大人向けの新刊のほか、児童書や古本も含めて1万6000冊が並ぶ。読書方法の解説書やジャンルごとのおすすめを紹介する本など「本を読むための本」を数多くそろえているのが特徴だ。
本の行商を始めたのは開店の半年ほど前。「熊谷堂書店」ののぼりを立て、川沿いをたどって熊谷駅まで。3、4時間かけて歩くようになった。
行き交う人から、奇異の視線を向けられていたが、続けるうちに、本を手に取ってくれる人が増えた。現在は腰を悪くし、売り歩く回数は減ったが、イベントに出展した際には実演販売を行うという。
開店から2年ほどしてコロナ禍となった時には、オンラインで店内を案内する「リモートde熊谷堂」を始めた。コミュニティーFM「FMクマガヤ」に月1回出演し、本を紹介する番組を4年弱続けた。
実は子どもの頃は本が嫌いだった。好きだったのはテレビゲーム。中学生の時にゲームを小説化した本を読んで「あまりの面白さで、読書がやみつきになった」と本の魅力に気づいた。
活字離れやネット通販の台頭で書店の経営は厳しい。それでも「多くの人に自分と同じような経験をしてほしい」と願って店を続けている。