杉咲花×若葉竜也『アンメット』5話 私たちは一人じゃない
三瓶友治(若葉竜也)に勧められ、難手術を執刀することとなった川内ミヤビ(杉咲花)。練習を重ねつつ、手術に対して不安を募らせるが……。『アンメット ある脳外科医の日記』(フジテレビ系月曜夜10時~)5話を、ドラマを愛するライター・釣木文恵と、イラストレーターのオカヤイヅミが振り返ります。
ロールキャベツを無言で受け入れる三瓶
川内ミヤビ(杉咲花)が、記憶障害を患って以来初めて術者(執刀医)となり手術を行った『アンメット』5話は、このドラマの魅力が詰まった象徴的な回となった。 もやもや病を患った住職・成海(三宅弘城)が運び込まれてきた。三瓶(若葉竜也)の指名によって、ミヤビが手術を担当することに。日記に残された麻衣(生田絵梨花)の「三瓶を信用するな」という発言に引っ掛かりながらも、ミヤビはひたすら手術の練習に励む。三瓶はミヤビの練習に付き添う一方で、関東医大に出向いて綾野(岡山天音)にミヤビのカルテを見せてくれるよう頼む。 ミヤビに手術を任せる際の、「あなたはできます」と繰り返す三瓶は強引にも見えた。しかし、いつまでも練習に付き添い、その陰で彼女の病状の真相を追い続ける姿からは、むしろ三瓶のミヤビに対する控えめな愛、声高に主張せず心に抱えた思いが感じられる。それが端的に表れていたのが、ミヤビが作りすぎたロールキャベツをおすそ分けしたシーンだ。悪気なく思わず「今日もですか?」と何度もミヤビが同じ行為を繰り返していることを伝えてしまった風間(尾崎匠海)に対し、何も言わずに受け入れる三瓶。ミヤビもまたそんな三瓶を見て、三瓶に対する疑いや迷いを断ち切ったのかもしれない。
チーム全員によるミヤビへのサポート
5話まできて、改めて毎日記憶がリセットされてしまうミヤビの朝が描かれたのは印象的だった。朝起きて自分の記憶がないことを知る、その不安と負担。そのシーンのあと、ミヤビは看護師長の津幡(吉瀬美智子)から、毅然として病気も手術も受け入れているように見える成海にも不安があることを伝えられる。だから、ミヤビも不安でいいのだと。危険だからと読経を取り上げられてしまった成海は、記憶障害によって一度は診察も手術もできなくなったミヤビに重なる。そんなミヤビだからこそ、患者に寄り添えるのだ。 手術当日。ミヤビは親友でもある看護師の森(山谷花純)に頼んで、家に泊まってもらっていた。森は起きるや、ミヤビに記憶障害があることを伝え、毎朝読むノートを渡して「今日は大事な手術があるから全部読んじゃダメ」と話す。いきなりのことに驚くミヤビの困惑する姿。もしいつものように一人の朝だったら、不安からノートを全て読んでしまったかもしれない。ミヤビはそれをわかって、森に頼んだのだ。「私のことは覚えてるでしょ? その私が言うね」という森の言葉の重さ。信頼できる相手に頼ることの大切さ。 病院でも、星前(千葉雄大)をはじめ、皆が少しでもミヤビの負担を減らそうと動く。ロールキャベツのシーンでもミヤビを見守っていた麻酔医・成増(野呂佳代)は手術開始前、「成海と一緒に餃子を食べに行こう」と手術後の楽しみを話して気持ちをほぐす。もちろん三瓶も見守る中、手術は無事成功する。 「私たちは一人じゃない。だから自分だけで完璧である必要はないんです」 前日に津幡から「あなたが教えてくれたんですよ」と伝えられた言葉。ミヤビはその言葉を書き記したノートを思い出す。 5話でもうひとつの軸となっていたのは、「全科専門医レベル」を目指す星前。それが一人ひとりのサポートによってチームとして実現できていることも、ミヤビに対する皆のサポートから伝わってきた。