桁違いの有権者!「世界最大の選挙」実施中のインドは日本とどう付き合うのか カレーとヨガだけじゃない、ジョージ駐日大使に聞いた新経済大国の行方
選挙管理委員会によると、有権者数は約9億6880万人。全国に105万カ所の投票所を設置し、選挙の運営や警備に従事する人々は1500万人に上る。選挙の管理や治安の維持が難しいため、投票は州や地域別に7回に分けて行い、6月4日に一斉開票される。 ジョージ氏は「わが国にとって重要なのは、直面する課題に対処することができるように成長を続けることなのです」と指摘し、選挙ではインドが躍進を続けることができるかどうかが争点だとの考えを示した。 「インドでは毎日、30キロ以上の長さの高速道路が造られています。新しい鉄道も電車も空港も港湾も建設されています。次の10年、この勢いを維持できるかどうかはインドにとって大変重要なことなんです。選挙について言えば、これは10億人にとっての民主主義の祭典です。10億人が政権を選ぶ。これはすごいことですよ」 インドメディアが投票直前の4月16日に報じた世論調査結果によれば、モディ首相率いるインド人民党(BJP)を中心とした与党連合は、2019年の前回の選挙を上回る393議席を確保しそうな勢い。対抗する国民会議派を中心とした野党連合は100議席に届かず、モディ氏の首相3選が濃厚な情勢になっている。「世界最大の選択」の結果は、1カ月半の長期戦の末に判明する。
▽国連にもの申す インドは「グローバルサウス」と呼ばれる新興・途上国の代表を自任している。2023年には新興・途上国の首脳らによる「グローバルサウスの声サミット」をオンラインで開き、モディ首相が「今こそグローバルサウスの国々が世界の利益のために声を一つにする時だ」と呼びかけた。同じ年には20カ国・地域(G20)の議長国も務め、国際社会での発言力は増しつつある。そんなインドが目指しているのが、国連安全保障理事国の常任理事国入りだ。 インドは同じ目的を共有する日本やドイツ、ブラジルと4カ国グループ(G4)を形成し、安保理の拡大論議を主導してきた。ジョージ氏に現在の国連の状況について意見を求めると「行き詰まっています。1945年に約50カ国で発足しました。今や世界には200カ国あるのです」と疑義を呈した。 「私たちは多極的な世界に住んでおり、国連は世界の代表であるべき組織です。機能を果たすためにはいくつかの改革が必要です。簡単な質問をさせてください。アフリカのどの国が安保理の常任理事国に入っていますか。中南米は? 世界最大の民主主義国も、世界最多の人口を有する国も、世界で最も早く成長している国も入っていないのです」
こう解説した上で、国連が現状を反映するためには、インドと日本が協働することが重要なのだと主張した。 インドには伸びしろがある一方で、貧富の格差、雇用不足など課題もある。めまぐるしく変わる世界で、インドという巨像が清濁併せのみながらさらに巨大化していくことは必至だ。世界人口の6人に1人以上がインド人となった今、この新興大国に日本がチャンスを見いだすことができるかどうかは、どう向き合うかによるのだろう。