刺すか刺されるか 北信越の技巧派集団・帝京長岡が昨年度の選手権覇者・岡山学芸館を下し初昇格王手
刺すか刺されるか--。緊迫感が漂う一戦を制したのは北信越の技巧派集団だった。 12月8日、高円宮杯U-18サッカーリーグ2023プレミアリーグプレーオフ(参入戦)の1回戦が広島県内で行われ、東広島運動公園陸上競技場の第1試合は帝京長岡と岡山学芸館の顔合わせに。プリンスリーグ北信越王者と、昨年度の選手権覇者の一戦は立ち上がりから拮抗する。 【フォトギャラリー】帝京長岡 vs 岡山学芸館 ボールを支配する帝京長岡に対し、岡山学芸館は組織的な守備と鋭いカウンターで応戦。中盤での攻防も激しさを増し、そこかしこで潰し合う展開になった。帝京長岡はMF水川昌志(2年)やMF山村朔冬(3年)がゲームを締め、岡山学芸館は田口裕真(3年)と田邉望(3年)のボランチコンビが豊富な運動量を生かして最終ラインの手前で防波堤となった。「押し込んだとしても中央に差し込めない」と振り返った古沢徹監督の言葉通り、互いに決定打を繰り出せない。前半が終わった時点でスコアレス。シュート本数も帝京長岡が4本、岡山学芸館は2本と、互いに譲らずハーフタイムを迎えた。 迎えた後半。帝京長岡が先手を取る。 「山村を左サイドから少し内側に取って、水川を助けるようにビルドアップを工夫した。橋本燦も運動量を持ってラインブレイクをしてくれる。なので、立ち位置を選手たちの中で整理させました」 指揮官の狙い通り、開始2分にFW原壮志(3年)がアタッキングサードで仕掛ける。縦を切られたと見ると、一気に中に切れ込んで左足でシュート。これが決まり、試合の流れを引き寄せる先制点をもぎ取った。 これでリズムを掴むと、12分にもキャプテン・FW堀颯汰(3年)を起点にチャンスを得る。パスを受けた橋本がスルスルと持ち運び、左足でゴールを射抜いた。 リードを奪ったあとはややトーンダウンしたものの、粘り強い守備で相手の攻撃を封じ込める。67分には184cmのFW香西健心(3年)を投入され、181cmのFW太田修次郎(2年)とともに制空権を握られる時間も増えたが、なんとか凌いでいく。アディショナルタイムに香西にゴールを許したものの、逃げ切った帝京長岡が10日のプレーオフ決勝に駒を進めた。 帝京長岡にとっては6度目のプレーオフ。過去5回は初戦(2回戦から出場した21年度と22年度を含む)で敗れており、一度も勝利を掴んでいない。特に21年度は勝てば昇格というシュチュエーションで桐生一から3ゴールを奪いながら、残り20分を切ったところから3失点を喫して4-3で敗れた。 この日も最後に1点を返されると、当時の試合を経験している堀は「脳裏に過った」と話す。それでも、最後まで仲間を信じ、最小失点で切り抜けて凱歌を上げた。 「この舞台に立ち続けていることがチームとしていい事。続けていればいつか勝てる。試合前にスタッフから言葉をかけてもらったけど、僕たちの代は今回しかない。自分たちで歴史を作りたいし、今回1つ勝てたので、次の試合までにいい準備をしたい」と堀の言葉。苦い経験を自分たちの力に変えて前に進むチームは、浦和ユースに勝って新たな一歩を踏み出せるか。いろんな人の想いを背負い、10日の大一番に挑む。 (文・写真=松尾祐希)