専門家“訴訟などのリスク避けたのでは” 新築マンション解体へ…引き渡し直前に
──契約者の方が入居間近だったにもかかわらず、突然の解体になったのはなぜなのか? マンションの建設前と建設後を比べると、建設後は(マンションの)シルエットが富士山の右側を隠すかたちになっています。法令に問題はなかったものの、景観が損なわれるということで住民から反発の声があがっていました。
■解体決定の経緯 市民の反発受け積水ハウス側は“変更案”提示も…
積水ハウスなどによると、積水ハウス側がマンションの事業計画を公表したのが3年前の2021年2月です。当初11階建て、高さ36.09メートルの予定でした。 しかし、市民からは反発する声があがっていました。そこで2022年1月に行われた3回目の住民説明会で積水ハウス側は10階建て、高さ32.70メートルとする変更案を提示しました。 しかし、これにも多くの市民がさらに階数を減らし高さも低くすることを要望しました。これに対し、市民の陳情書によりますと、積水ハウス側は「応じられない」と答えたといいます。
■解体決定の経緯 市民がさらなる低減を求める中、2023年1月に着工
その後、市民からの陳情を受け、2022年7月に市長が積水ハウス側に対し、建物のボリューム感のさらなる低減などを求める指導書を交付しました。その指導書に対応して、9月に積水ハウス側は高さをさらに下げ、30.95メートルにする変更案を出しました。 しかし、この案にも市民がさらなる低減を求める中、積水ハウスは2023年1月にマンションを着工しました。そして、契約者には7月に部屋を引き渡す予定でしたが、6月3日に事業中止と解体を決定しました。その理由について、積水ハウスは「建物周辺の影響に関する検討が不十分であった」としています。
■引き渡し直前に解体決定 過去に同様の事例は?
──市民との折り合いがつかないという話はよく聞くが、引き渡し直前で解体を決めることは過去にもあったのか? 不動産の売買にくわしい不動産コンサルタントの長嶋修さんによると、不動産業界で30年働いている中で初めて聞くケースだったといいます。 ただ、解体に至るまでに住民の要望に対して何度も高さの変更に応じたことは「真摯(しんし)な対応」だったと話しています。