大谷翔平と松井秀喜の大きな違いとは…? 日本人スラッガー2人の打撃を徹底比較!
MLB分析サイト『Baseball reference』のデータをもとに、両選手の3方向別の本塁打数を比較すると以下になる。 松井:ライト111(63.4%)、センター59(33.7%)、レフト5(2.9%) 大谷:ライト50(28.4%)、センター110(62.5%)、レフト16(9.1%) しかし、松井氏がレフト方向の長打を打てなかったわけではない。二塁打になるとセンター方向やレフト方向の割合が増え、大谷選手と打球方向が変わらなくなっている。 松井:ライト84(33.7%)、センター101(40.6%)、レフト64(25.7%) 大谷:ライト48(34.3%)、センター57(40.7%)、レフト35(25.0%) ほぼ同数の本塁打を打った時点で、二塁打の数は松井氏の方がずっと多くなっている。在籍期間の違いだけではない。松井氏は4.84試合に1本の二塁打を打っているが、この数字は大谷選手(5.18試合に1本)よりも小さい。 松井氏がセンター~レフト方向への二塁打としていたような打球の多くを大谷選手は本塁打にしていたことになる。ここが本塁打のペースの差として考えられる。
逆風にさらされる下位打線、克服すべき課題は?
ここで、両選手がプレーした時期でMLBの野球の質自体が変化している点に留意せねばならない。松井氏の在籍時に比べ、大谷選手の在籍時は、MLBでのフォーシームの平均球速は約2マイル(約3キロ)上昇、スライダーの平均球速も上昇した。一方、平均打率は最大で2分台の低下を示した。 こうした中、平均長打率は、打率の低下傾向に反し2014~2019年に大きく上昇している。この推移は、フライねらいの打撃が増加した「フライボール革命」や、投手の対抗策としての回転数の多い高めフォーシームの増加を反映している。
松井氏の時代にはバットの芯を外すツーシームが流行し、オークランド・アスレチックスを題材にした映画『マネーボール』のように出塁率の重視傾向が高まっていた。 データ解析ツール『スタットキャスト』の導入をはじめとするデータ分析の深化や科学的トレーニングは、大谷選手の時代に大きく進歩したものだ。ピッチクロックの導入、守備シフトの拡大やこれに対する規制など、大谷選手の時代での変化は他にも数多い。 同じ170本台の本塁打でも、背後のプレー環境はそれぞれの時代の中で変化している。こうした中、大谷選手はより厳しい球に立ち向かう一方で、対応するトレーニング環境や分析技術も進化している。 両選手のMLB在籍時期が入れ替わっていたら、それぞれの打撃成績はどのように変わったのか、別の意味で興味深い。 私自身、松井氏の引退直後は、同選手の本塁打記録を抜く日本人は当分現れないと思っていた。しかし大谷選手はこの私の見方をあっさり覆した。 一方、松井氏も日本人初のスラッガーとして移籍し、重圧の中数々のハードルをクリアし成果を出した。両選手に共通するのは、経験したMLBの野球環境の変化に対応し、歴史に残る素晴らしい成果を挙げた点だ。 そして、大谷選手はこれからも新たな歴史を作っていく。打者としてだけでなく、来年以降は、再び投手としても。
ベースボールチャンネル編集部