中小企業に忍び寄る高齢化 後継者がいなくても…M&Aで事業や雇用継続 これから 100歳時代の歩き方
高齢社会の波が中小企業の経営にも忍び寄っている。東京商工リサーチによると、後継者がいないための企業倒産は令和5年度に456件発生し、5年連続で過去最多を更新した。企業の技術力や雇用の受け皿としての働きを守るには、親族や従業員だけでなく、外部も後継者の候補に入れる必要がある。解決策として、M&A(企業の合併・買収)にも注目が集まっている。 【写真】M&Aで事業承継した中村工芸のショールーム。高級ソファなどが並ぶ 「第一印象で好感を持つことができた。今の親会社はM&Aの後も、従業員をとても大事にしてくれている」 大阪府東大阪市で特注家具製造販売を手がける中村工芸の元専務で、現在は顧問の中村真理子さんは、M&Aをこう振り返る。中村工芸は3年3月、大阪市に本社を構える家具・建具卸売業のリープテックに全株式を譲渡した。 中村工芸は昭和33年創業。高級感のあるオリジナルのソファやサイドテーブルを、空港やホテルのラウンジなどに納めてきた。 後継者問題を意識するようになったのは、中村さんの夫で2代目社長の弘さんが50代後半に差し掛かったころ。夫婦には3人の子供がいるものの、それぞれ別の道を歩み始めていた。 ほかに後継者もおらず、M&A仲介大手の日本M&Aセンターに、従業員の雇用継続▽退職金制度の継続▽社名の存続-などの条件を出して相談することにした。その結果、候補として挙がったのがリープテックだった。 相乗効果は抜群だった。ソファなど「脚モノ」を得意とする中村工芸と異なり、リープテックは棚などの「箱モノ」が得意で、販路がしっかりしていた。全体として商品のラインアップと販路が充実。中村工芸自体の年商が6千万円以上増え、従業員の賃上げもできたという。 ■社長「70歳以上」3割超す 東京商工リサーチによると、日本企業の社長の平均年齢は令和5年に63・76歳となり、調査を始めた平成21年以降で最高だった。年代別の構成比では70歳以上が初めて30%台後半に到達。一方、後継者不在率が初めて6割を突破した。うち約半分は事業承継の方針が決まっていない「未定・検討中」だという。 中小企業庁は平成29年、令和7年までに70歳超の中小企業・小規模事業者の経営者127万人が後継者未定となり、このうち約半数が黒字廃業の可能性があると試算した。累計で約650万人の雇用、約22兆円の国内総生産(GDP)が失われる可能性があると警鐘を鳴らしている。