トランプ再選を警戒するウォール街:最大の懸念は一段の保護主義拡大
トランプ再選を警戒するウォール街:最大の懸念は一段の保護主義拡大
共和党の大統領候補者選びでは、トランプ前大統領に大幅なリードを許しているヘイリー元米国連大使であるが、資金調達額ではトランプ氏を上回っている。 寄付を集める政治資金団体であるスーパーPAC(政治活動委員会)「スタンド・フォー・アメリカ・ファンド」で、ヘイリー氏は2023年の後半6か月間で5,010万ドル(約74億円)を調達した。これは、同時期にトランプ氏のスーパーPAC「メイク・アメリカ・グレート・アゲイン」が集めた資金よりも約500万ドル多かった。トランプ氏の大統領候補指名を阻止したいウォール街(金融業界)や企業の幹部による支援が、ヘイリー氏の資金調達を後押ししている。 ホーム・デポの共同創業者ケン・ランゴーン氏、リンクトインの共同創業者で民主党献金者であるリード・ホフマン氏に加えて、ウォール街で著名な投資家、資産家のスタン・ドラッケンミラー氏、ヘンリー・クラビス氏、ケン・ランゴーン氏、クリフ・アスネス氏などがヘイリー氏を揃って支援している。これは、ウォール街がトランプ氏の再選を強く警戒していることの表れだろう。
第1期トランプ政権では産業界やウォール街には期待も
第1期トランプ政権では、産業界やウォール街は、トランプ氏の産業寄り(pro industry)の政策姿勢に期待も抱いていた。大統領選挙当日の夜に株価指数先物は急落したが、翌日の株価は大幅高で引けたことがそれを表している。トランプ政権の経済政策の中でも特に期待されたのは、大型減税策だった。 トランプ政権は公約通りに、米連邦法人税率を35%から21%に引き下げることを柱とする大型減税策を、2017年12月に成立させた。これは、レーガン政権下での1986年の減税以来の抜本的な税制改革であり、減税の規模は10年間で1兆5千億ドルと過去最大となった。企業の海外子会社からの配当課税も廃止し、多国籍企業などが海外にため込んでいる余剰資金を米国内に引き寄せることも狙った。また個人所得税についても最高税率を39.6%から37%へと引き下げた。この個人所得減税の多くは8年間の時限措置だった。こうした減税策が、現在の米国の財政赤字問題につながっている。