急成長遂げた東京国際大学サッカー部 前田秀樹監督がこだわった「観客席」と「教える側の情熱」
伊東純也、守田英正、三笘薫、上田綺世……。FIFAワールドカップ・カタール2022で躍動した日本代表メンバーのうち9人が大学サッカー経験者だったことは、選手育成という観点で大きな注目を集めた。大学サッカーを経由して欧州でプレーする選手も増えており、大学は日本サッカーのレベル向上に欠かせない存在となりつつある。そこで本稿では、関東大学1部リーグ所属・東京国際大学サッカー部を15年間指導する前田秀樹監督の著書『東京国際大学式 「勝利」と「幸福」を求めるチーム強化論』の抜粋を通して、大学サッカーの組織づくりについてリアルな現場の声をお届けする。初回となる今回は前田監督がこだわったゼロからの環境整備についてひも解く。 (文=前田秀樹、構成=佐藤拓也、写真提供=東京国際大学サッカー部)
前田秀樹のもとに届いた3つのオファー
2004年から水戸ホーリーホックの監督を務めていましたが、5年目の2008年シーズンが終わった時点で契約満了を告げられました。1年ぐらい、ゆっくりと指導の勉強でもしようかなと考えていたところ、ある大学から連絡がありました。その大学は出身者しか監督にしてこなかったんですけど、はじめて外部の人間を監督にしたいという打診を受けました。自分にとってのチャレンジにもなると思ったので、その大学からのオファーを受けようと考えていました。 そんなある日、食事をしていた時、ある後輩から電話が入ったんです。「会ってほしい人がいる」とのことでした。後輩の会社の会長と東京国際大学の倉田信靖理事長がつながっていて、倉田理事長がサッカー部を強化したいという考えがあって、その会長に相談があったそうです。そこで私を推薦してくれたそうです。ちょうど、水戸を離れるタイミングだったということで、白羽の矢が立ったそうです。ただ、他の大学から先に話をいただいていたので、断ろうと思ったんですけど、どうしてもということで、会うことにしたんです。 サッカー部を作って強化したいという話をされた後、『ぜひ監督をやってもらいたい』とお願いされたんです。理事長は忙しい方で、会ってから10分しか経ってないのに「決めました!」って言うんです(笑)。まだ私は決めていないのに(笑)。「今はサッカー部の施設は何もないけど、これから作っていく。希望を聞くから何でも言ってほしい」と言ってくれました。その言葉にすごく興味を持ったのですが、その前に他の大学から声をかけていただいていたので、どうしようかと悩みました。 先にお話をいただいた大学は伝統のある大学で、それはそれでやりがいがあると思ったんですけど、東京国際大学は真っ白な状態でこれから作り上げることができる。すべて自分で作れるということに魅力を感じたんです。悩みに悩んだ末、先にお話をいただいていた大学に断りを入れて、東京国際大学のサッカー部の監督に就任することを決めました。また、その後、Jリーグを目指すチームからもオファーを受けましたが、その決断を変えることはありませんでした。