『ボルテスV レガシー』一筋縄ではいかなかった実写映画化 構想から20年、監督が直面した問題
「私がスタジオに直接売り込んだのですが、最初は『野心すぎる企画で、莫大な製作費がかかる』と却下されました。それでも、実写化を諦めきれなかったので、シニア・エグゼクティブ・プロデューサーのラーソン・チャンに自ら相談しに行きました。彼もまた、『ボルテスV』を国内で実写化できる人材を探していたのです。その後、(同作を製作した)GMAネットワークと話し合いを重ね、東映に承認を求めました」
2020年にようやく承認が得られ、『ボルテスV レガシー』の製作がスタート。しかし、新型コロナウイルス感染症のパンデミックによって、製作はすぐに休止せざるを得なくなった。「何もかもストップしました。店は全て休業状態なので、機材やセット材料、コスチュームの生地などが一切入手できなくなってしまったのです」 コロナ禍で製作陣を悩ませたのは、それだけではない。アームストロング家の三男、“リトル・ジョン”・アームストロングを演じたラファエル・ランディコくんは当時子役だったため、ロックダウン下で撮影に参加することが禁止されていた。
「私たちはラファエル不在で撮影を進めて、彼が参加できるようになってから全員のシーンを撮ることにしました。しかし、(コロナ禍が明けて)3年が経つと、ラファエルは成長してしまい、衣装を3回も作り直す必要があったんです。彼の母親には『あまり太らせすぎないように』とお願いしました(笑)」
2023年、無事にテレビシリーズ全90話と映画1本が完成し、フィリピン国内で放送された。構想期間を含めると、約20年という長い道のりだった。渾身の一作を完成させたマーク監督は「日本のみなさんにも、気に入ってもらえることを願っています。チャンさんも(『ボルテスV レガシー』は)『日本への贈り物』と話していました。私たちフィリピン国民が、どれほど『ボルテスV』を愛しているのか。長い年月をかけて情熱を注ぎ込んだこの作品を観て、確かめてほしいです」と日本の「ボルテスV」ファンにアピールしていた。(取材・文:編集部・倉本拓弥)